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バレーボールPRESSBACK NUMBER
男子バレー“パリ五輪の悲劇”から1年…因縁イタリア主将が今明かす“日本に逆転勝ち”した日「試合直前、仲間にこう伝えたんだ」
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弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakashi Yuge
posted2025/09/05 11:00
NumberWebの単独インタビューに快く応じてくれたイタリア代表主将シモーネ・ジャンネッリ(29歳)。石川祐希が所属するペルージャでもキャプテンを務める
パリ南アリーナでの試合直後、MBロベルト・ルッソの他、複数の選手が「日本は別次元のプレーをしていた」と証言した。
まさに命からがらの大逆転勝利であり、日本戦はイタリアバレー関係者の間で「かつてないほど心臓を震え上がらせた試合」として衝撃と畏怖を与え、話題となった。ただ、最終的にメダルを逃したことや女子代表が悲願の金メダルを獲得したことで男子代表の戦いぶりは世間の関心から外れ、当事者である選手たちがパリ五輪について語る機会は、母国イタリアのメディアでもほぼなかったといっていい。
ジャンネッリは、あの日の日本のプレーは別次元にあったという前述のルッソの言葉にうなずき「チーム全員がそう感じていたと思う」と続けた。
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「日本と当たるチームは必ず彼らのペースに巻き込まれる。個人的には、日本との対戦が決まったときから拮抗したゲーム展開になるだろうな、と考えていた。試合の直前にロッカールームで仲間たちに『今日は確実にタフなゲームになるぞ』と声をかけたのも覚えている」
「そもそも、五輪でメダルを狙う国にとってトーナメントの山場は準々決勝だと言われている。準決勝以降はメダルがかかった一発勝負だが、実はその一つ前の試合が一番難しい。(母国イタリアのメディアに)『ベスト8で対戦したくない国はどこか』と聞かれて、俺は迷わず『日本だけは嫌だ』と答えていたくらいだ。イタリアは何とか勝ちを拾えたけれど、勝敗を分けた差は本当にわずか……1センチくらいだったろう」
ジャンネッリは、長い精密コンパスのような人差し指と親指を静かに挟めた。ジェスチャーをある距離でピタリと止める。
小さいようで果てしなく隔たる“1センチの差”。
「日本との準々決勝がイタリアのバレー史に残る名勝負だったのは間違いない。あれは今考えても、世紀の一戦と呼ぶべきものだった。だが……」
イタリア代表の主将は「あの五輪で、今も切なく思っていることがある」と言った。〈後編に続く〉


