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バレーボールPRESSBACK NUMBER
男子バレー“パリ五輪の悲劇”から1年…因縁イタリア主将が今明かす“日本に逆転勝ち”した日「試合直前、仲間にこう伝えたんだ」
text by

弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakashi Yuge
posted2025/09/05 11:00
NumberWebの単独インタビューに快く応じてくれたイタリア代表主将シモーネ・ジャンネッリ(29歳)。石川祐希が所属するペルージャでもキャプテンを務める
「日本は本当にいいプレーをしていた。我々のプレーも決して悪かったわけじゃない。ただ、日本の方が少し上をいっていた。最初の2セットをあっという間に取られた後、第3セットは出だしから悪くて、心理的にまずいなと感じていた。先に取られた2セットのことが脳裏をよぎった」
「21‐24の場面で自分にサーブが回ってきた。考えていたのは“最後のボールがコートに落ちるまで、ゲームは決して終わらない”ということだけだ。日本のマッチポイントが3度続いたが、うちがブレイクを取れるとずっと信じていた。もちろん、そう信じてもつねにうまくいくわけじゃない。キャリアの中で何度かそうやって敗れたこともある。それでも(ビッグゲームの決定的な場面で)自分はやれるはずだという自信はずっと持っている」
「サーブの時、得点ボードは目に入れなかった。あのときは、自分が何をどうやればベストか、純粋にそれだけを考えていた。スコアの推移に心を乱されることは避けたかった。もし下手に得点計算するとプレーが萎縮してしまう。自分自身の内面だけに集中してあの状況から逆転できたが、うまくいって本当によかった。信じられないくらい素晴らしいゲームだった」
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冷静に話を始めたイタリア代表主将だが、呼び覚ました記憶の解像度が上がるに連れ、その声に快活な響きが混じる。日本戦ではあまりに守備陣が拾いまくるせいでボールが落ちないものだから、ついにイタリアの選手たちが呆れて笑いだした。極限に集中していた試合でそんなことがあり得るのか、真偽を問うと「本当だよ!」と3度くり返した。
「必ずヤマモトがいるじゃないか!」
「日本は最高に厄介な相手だ。彼らとやるのが難しいのは、日本は守備が素晴らしいだけでなく攻撃も非常にいいチームだからだ。アウトサイドヒッターもセッターもとてもレベルが高いし、ここ数年でものすごく強くなった」
「対戦する立場からすると、日本は相手の“心を折ってくる”チームなんだよ。こちらが会心のアタックを打ち込んでも、拾って逆に打ち込んでくる。負けじとこっちも打ち返す。すると、向こうのコートには必ず“あのヤマモト(山本智大)”がいるじゃないか(笑)! 五輪で一番やばいと思った選手はヤマモトだよ。どこにいても追いついて拾って、必ず上げてくる。我々はほとほと呆れて、互いに顔見合わせて笑うしかなかった。これ以上どうしろっていうんだ、ってところまで追い込まれた」
「あの試合は本当にきつかった。日本は守備でかなりのプレッシャーをかけてきた。彼らとやるときにはミス一つ犯せない。もしミスをしたら、その分確実に点差をつけられる。だから、我々は日本にリードされても引き離されないように1点ずつ食らいついていったんだ」
第3セットのマッチポイントで王手をかけたところで日本選手の多くが“勝ったと思った”と五輪後に語っている。ジャンネッリに伝えると、彼は「そうだろうね」とうなずきながら微笑した。


