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「お前なんかプロレスやめろ」NY生まれ、北海道大学法学部卒の高学歴レスラー・月山和香がスターダムで“生き残った”理由「叩かれても嫌われても…」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/09/02 11:01
北海道大学卒の経歴を持ち、スターダム参戦4年目でリーグ戦にも初出場を果たした月山和香
「叩かれても嫌われても、やりたいことをやる」
勝てなくてもバカにされても、諦めるのは嫌だった。好きでやっているプロレスなのに、なんで他人に言われてやめなきゃいけないのか。
そうして闘い続けて、昨年12月に初のベルトを巻いた。若手主体興行『NEW BLOOD』のタッグ王座だ。身長181cmのパートナー・HANAKOとのコンビはバランスが悪いようでいい絶妙のチームワーク。すでに4度の防衛に成功している。
この夏は恒例のシングルリーグ戦、5★STAR GPにもエントリー。入団4年目での初参戦だ。今年は参加選手の枠が広がったこともあるのだが、とにもかくにも4年かけて、タイトルホルダーとして“スターダム最強争いの場”に足を踏み入れるところまできた。そこまで生き延びた、と言ってもいい。
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リーグ戦は2勝5敗、ブロック最下位タイに終わった。チャンピオンの上谷沙弥には40秒で負けている。それにも理由がないわけではなかった。「10秒で勝つ」と宣言した上谷に「逆に10秒で丸め込む」と返し、短期決戦を挑んだのだ。
「私は(試合時間が短い)ハイスピード王座を狙っているので。リーグ戦ではその糸口を掴みたかった。まだまだ足りないところだらけだって気付かされましたけど、前進はしていると思います」
もともと“ハイスピード型”ではない水森由菜がベルトに挑戦し、大善戦した姿に「心を揺さぶられた」と月山。自分だってやればできると信じている。
ベルトがほしいと公言するから「お前には無理だ」と叩かれる。上谷戦の“10秒返し”発言に続いて、リーグ戦で全敗したら「今月のお給料はいらない」とSNSに書き込んだりもした。わざわざ言わなければ波風も立たないのだが、月山は言わずにはいられない。
「やりたいこと、思っていることがあるのに人目を気にして隠してるなんて、それは“なりたい自分”じゃないんです。叩かれても嫌われても、やりたいことをやるし言いたいことは言います。最近、特にそう思うようになりました」
「私は好きなことをやって、その証を残したい」
今年、月山は短期間だが欠場している。病気で入院し、手術も受けていた。その時に強く思ったのは「健康でプロレスができるのは当たり前じゃない」ということ。今日できたことが、明日はできなくなるかもしれない。
「だから今日という1日を悔いなく過ごさなきゃいけない。今日がダメでもすぐに前を向く。好きなことができる時間なのに、落ち込んでたらもったいないですよ。私は好きなことをやって、その証を残したい」
最近は書店だけでなく図書館にも通うようになったそうだ。これまで興味のなかった分野の本にも手を伸ばしてみる。そのことで新たな発見があり、好奇心の幅が広がっていく。
リングの中でも外でも、自分の人生を少しも疎かにしない。病弱で親に心配ばかりかけてきた読書好きな女の子は、今そうやってプロレスラーとしてタフに生きている。



