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「お前なんかプロレスやめろ」NY生まれ、北海道大学法学部卒の高学歴レスラー・月山和香がスターダムで“生き残った”理由「叩かれても嫌われても…」
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/09/02 11:01
北海道大学卒の経歴を持ち、スターダム参戦4年目でリーグ戦にも初出場を果たした月山和香
SNSで何度も書かれた「お前なんかプロレスやめろ」
1年後に退団し、スターダム参戦。取材する側としては驚きもしたし納得もいった。驚いたのは、153cmと小柄でこれといった武器もなかったからだ。業界最大の女子団体であり選手層の厚いスターダムでは、苦労することが目に見えていた。
ただアクトレスガールズ時代から“小悪魔”キャラで先輩レスラーにちょっかいを出すなど、なんとか工夫してインパクトを出そうとする姿が印象的でもあった。この世界で頑張りたいという気持ちが強いことは、当時から伝わってきていた。
初勝利は2023年の3月。勝てないことが話題になるような選手だった。筆者はスターダムに入りたての頃にも月山にインタビューしたのだが「初勝利の後に記事を出しましょう」と約束して、そのままお蔵入りになった。そうこうしているうちに“勝てない月山”の記事がいくつか掲載された。
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「お前なんかプロレスやめろ」
SNSで何回そう言われたか分からない。運動神経は悪くないはずなのだが、プロレスに関しては上達が遅かった。
「1対1で闘うという行為自体に戸惑いがありましたね。それまでケンカもしたことなかったので」
ましてスターダムは練習の量も強度も桁違いだった。三半規管を鍛える練習で吐き、家に帰ると練習中の動画を見返しながら泣いた。
月山はなぜスターダムで“諦めなかった”のか?
それでもプロレスをやめなかった。スターダムでは無理だ、ともならなかった。なぜか。
「だって、こんなにできない自分にも優しく教えてくれる先輩がいるんですもん。ついていけないからやめるとか、そんな恥ずかしいことはできなかった」
スターダムで最初に所属したユニットはコズミック・エンジェルズ(コズエン)。タックルで倒されると頭を打ってしまう月山に、リーダーの中野たむは「私がタックルしてあげる」と受身の練習に付き合ってくれた。
「タックルは相手にぶつかるから、かけるほうも痛いんです。それなのに“大丈夫、何百回でもやってあげるから”って」
白川未奈は月山の試合をすべて見てアドバイスをくれた。ドロップキックの打点が低く、当たりが浅いのを見たウナギ・サヤカは「腸腰筋を鍛えるといいよ」と教えてくれた。高く飛んで強く当てるには、足を引きつける筋力が必要だった。
「その時に教わったトレーニング方法は、今は私が後輩たちに伝えてます。“これはウナギさんに習ったんだよ”って」



