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18歳“破格の新人女子レスラー”「偏見にも勝たなきゃいけない」山岡聖怜が明かす“嫉妬した相手”とは?「オーラがまたムカつくんです(笑)」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/08/30 17:24
今年1月にデビューした新人女子レスラーの山岡聖怜(18歳)
「あの時は本当に悔しかった」抱いた嫉妬
プロレスラーとしては「ほとんどすべて」を高橋奈七永に教わった。たとえば体を捻らない“背面式”のドロップキック。試合での心構えはもちろん、日常生活での態度からアドバイスを受けた。
「奈七永さんは普段の生活からプロレスラーなんです。メンタルが弱くても、自分次第で強くできるんだとも言われました」
奈七永は5月に引退。最後のリングではゆかりの選手たちと1分間ずつ対戦している。その1人が山岡だった。結果はフォール勝ち。
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「感謝を伝える一番の方法は勝つことだと思って。最後は無理やり抑え込みました」
心酔している奈七永に悔しい思いをさせられたこともある。長与千種率いるマーベラスとの対抗戦。山岡は奈七永と組み、彩羽匠&暁千華と対戦してタッグ王座を防衛した。3月の後楽園ホール大会でのことだ。
山岡が青木真也直伝の「エイオキクラッチ」で暁をフォールして勝利。だが試合後、奈七永は暁を「お前、パッションあるな!」と絶賛した。引退間近にこんな選手と出会えるとは、と感激で涙を見せるほどだった。
暁は2006年3月生まれで昨年10月にデビュー。山岡より少しずつ早いがほぼ同期と言っていい。そういう選手を、奈七永が泣きながら褒めている。自分が隣にいるのに……。
「あの時は本当に悔しかった。奈七永さんが新人をあそこまで褒めるのって、相当凄いことなので」
山岡自身も、暁のことは意識していた。それも練習生の頃からだ。鳴物入りでデビューした山岡に対し、暁は過酷な公開プロテストが話題を呼んだ。
“エリートと雑草”のライバル関係
簡単に言ってしまえば“エリートと雑草”の構図。だがエリートが雑草にコンプレックスを持つこともある。
「暁は体格もいいし、私が持ってないものを全部持ってるなって思うんです。プロレスラーとしての魅力というか、オーラがあるっていうんですかね。そのオーラがまたムカつくんですけど(苦笑)」
山岡はレスリングのベース、いわば技巧があるから試合ぶりがクールに見えがちだ。一方、暁は感情むき出し。とにかく負けん気が強い。
マリーゴールドとの対抗戦では、セコンド中や記者会見でもジャージの下にコスチュームを着込み、いざとなるとジャージを脱いで臨戦態勢を取ってみせる。いかにもプロレスラーらしい振る舞い方だ。
暁はマリーゴールドのリーグ戦にもエントリー、山岡と同じブロックになった。「絶対にシングルでも勝つ」と山岡は腕を撫していたのだが、暁が体調不良で欠場することに。ライバルへの気持ちは、溜め込まれたままになった。
8月8日には、対抗戦でマーベラスの大会に乗り込んだ。会場は何度も試合をしている後楽園ホールなのだが、ホームリングとは雰囲気が違ったという。
「会場に入った時から緊張感が凄かったです」



