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18歳“破格の新人女子レスラー”「偏見にも勝たなきゃいけない」山岡聖怜が明かす“嫉妬した相手”とは?「オーラがまたムカつくんです(笑)」
posted2025/08/30 17:24
今年1月にデビューした新人女子レスラーの山岡聖怜(18歳)
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
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Norihiro Hashimoto
今年1月3日にデビューしたマリーゴールドの新人・山岡聖怜は、インタビュー中に何度も何度も「悔しい」、「悔しかった」と口にした。プロレスファンが抱く彼女のイメージからはかけ離れた姿だろう。
2006年11月生まれの18歳。ジュニア年代のレスリングで全国レベルの実績を残し、“スーパールーキー”と呼ばれる。マリーゴールドでは選手に背番号が割り振られるのだが、山岡は「18」だ。野球(ジャイアンツ)でいうエースナンバーとしてロッシー小川代表が選んだ。
姉はグラビアタレントの山岡雅弥。SNSに姉妹ツーショットを掲載することもある。そんな話題性もあって、山岡は入団とデビュー決定から記者会見で報告された。普通の新人とは扱いが違った。
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デビュー戦の舞台は大田区総合体育館。年始のビッグマッチだ。試合後に“女子プロレス界の人間国宝”高橋奈七永にタッグ結成を持ちかけられ、すぐにタッグ王座挑戦。1月19日、デビュー16日でチャンピオンになった。
青木真也とグラップリングのスパーリングをすると実力に太鼓判を押され、開催中のシングルリーグ戦では初戦で“アイコン”岩谷麻優から大金星をあげた。順風満帆としか思えないプロレス人生。しかし本人にとっては悔しいことばかりでもあるのだ。スーパールーキーの内面にはコンプレックスがある。それは経歴をなぞっているだけでは決して分からないことだ。
レスリングとプロレスは「逆なんです」
たとえば、武器であるレスリングにも複雑な思いがある。もしかしたら、今頃はオリンピックを目指していたかもしれない。地元の福岡を出て、高校は東京の名門・安部学院に進んだ。けれど怪我で挫折し、レスリングから離れてしまう。そんな時にスターダムでジュリアを見て、新しい夢を得たのだ。
センダイガールズプロレスリングのエースである橋本千紘も安部学院レスリング部出身。最近、業界の底上げを目指して各団体の若手を集めたレスリング練習会を主宰するようになった。母校の練習に若手レスラーたちを参加させ、指導しているのだ。
その様子をSNSで見ると「“あぁ……”っていう気持ちになります」と山岡。「アベガクでの練習は私が続けられなかった、途中で離れてしまったものなので」。
レスリングとプロレスの違いにも戸惑った。レスリングは勝つためにやるものだが、プロレスは勝つだけでなく“見せる”ことが重要だ。
「対戦相手だけじゃなくお客さんとも試合をしているというか。声援があるから頑張れるというのが、リングに上がってみて分かりました」
技にしても受身にしても、大きく分かりやすく、伝わりやすく“表現”するのがプロレスだ。逆にレスリングではモーションが小さいほうが技を決めやすい。
「私は試合で感情を見せるのが得意じゃないんです。レスリングではきつい時にきつそうな顔をしちゃいけないので。相手に伝わっちゃいますから。でもプロレスは全部の感情をお客さんに伝えなきゃいけない。逆なんです」


