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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「あれ? 左足が動かない」箱根駅伝“3代目山の神”神野大地を襲った難病とは…1年以上原因不明の不調で「引退も考えたけど諦めきれず…」
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/08/29 11:05
MABPマーヴェリックで選手兼任監督として活躍する神野大地だが、実はこの2年難病に苦しめられていた
絶望的な時間を過ごす中、MGCが2週間後に迫っていた。
1週間は走るのをやめて、バイクやフィジカルのトレーニングをメインにした。MGCの3日前に8000mのビルドアップ走をしたが、足の動きは悪いままで、あとはジョグだけで済ましてMGC当日を迎えた。
この時の神野の落胆は、いかばかりのものだったのか、想像もつかない。
0.1%でも可能性があるなら
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東京五輪のMGCで敗れた後、パリ五輪への挑戦を決め、この日に賭けてきた。それなのに走る前から事実上「パリ陥落」という痛烈な現実を突きつけられていたのだ。
「良い結果が得られないのが分かっているのに、みんなが最大の目標とするレースに出るのは、気持ち的にすごく嫌でした。でも、MGCは、選ばれし者だけが走れる舞台ですし、スタートラインに立つのも当たり前じゃない。その大きな舞台で本調子の100%は出せないかもしれないけど、今の自分ができる100%なら出せるんじゃないかなと思ったんです。自分のスタイルは、どんな時も諦めずに走ること。0.1%でも可能性があれば頑張りたいですし、この時は応援してくれる人がたくさんいました。これまで自分がやってきたことを大切にしたかったんです」
レース当日の朝も8キロほどアップするとぎこちない足の動きが解消された。前日はやめようと思っていたが、「やっぱり出ます」と髙木と中野に静かに伝えた。
2023年10月、パリ五輪、男子マラソン代表を決めるMGCは、雨の中でのスタートになった。選考レースゆえに、出足はスローなスタートになると思っていたが、最初の1キロを2分50秒のスピードで入った。神野は、そのスピードについていけず、1キロで先頭集団から離れてしまった。それでも残りの41キロ、最後まで諦めずに単独で走り続けてフィニッシュした。
もしかすると、レースが終わったら少し良くなるかなと
「結果は残せなかったですけど、レースが終わった後、ちょっと期待していたことがあったんです。この症状は、もしかするとMGCの緊張感やストレスやプレッシャーが影響しているんじゃないかなと思っていたので、レースが終わったら少しは良くなるかなと。
でも、まったく変わらなかった。思うように走れないし、自分の競技レベル的にも次の五輪を目指すのは難しいと思ったので、引退も考えました。でも、やめられなかった。終わった後、すごく悔しかったんです。現役を諦めきれないからこその悔しさと思うので、次の目標を見つけて走りつづけていこうと思いました」

