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「優勝って、こんなにつれえんだ」“11年目の25歳”渡辺桃がスターダム『5★STAR』初制覇…「格が落ちたな」「来年は強いヤツ集めろよ」あえての苦言も
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原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/08/27 17:38
9度目のチャレンジで『5★STAR GP』初優勝を果たした渡辺桃。8月23日、大田区総合体育館
「AZMとはそうしたかった」1対1の戦いを選んだ理由
渡辺は「決勝に行ったら着よう」と、白いリングコスチュームも持ってきていた。大一番のタイトルマッチで着てきたものだ。トップの選手としてAZMを倒したい。そう考えていた。
二人は対峙した。意識が飛びそうになった。それでも渡辺はAZMと向き合った。セコンドの琉悪夏と稲葉あずさが介入しようとしたが、渡辺はこれを制して、1対1の勝負を選んだ。「AZMとはそうしたかった」。そして何度も何度もパイルドライバーをAZMに浴びせた。とどめはピーチサンダーだった。
「1年間、白いベルトの防衛戦やって疲れちゃった。やりたいことやってきたから、いったんシングルはいいかなって思ったけれど。またベルトに興味を抱くようになった。取れなかったけれど赤いベルトやIWGPが欲しいなとか思うようになった。くじけてはない。その日がいつ来るのか、私にはわかっているからね」
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渡辺は自信をのぞかせた。
「やってないことが多くある。もっと取りたいベルトがある。プロレスが楽しい。それがモチベーション。大江戸隊からそれがH.A.T.E.に変わったけれど楽しい。仲間も増えて、みんな強いから」
今回の優勝には多くの反響があったという。こんなメッセージもあったようだ。
「渡辺桃、応援してないけど、おめでとう、っていうのもあったな。それでも、うれしいよ」
「今回出てないヤツらをぶっ潰さないと。団体背負うつもりはない。他団体に上がるときはスターダムを意識するけれど、自分がやりたいことをやるだけ。今からが渡辺桃の時代だよ」
歴代の優勝者は愛川ゆず季、高橋奈苗、紫雷イオ、宝城カイリ、美闘陽子、トニー・ストーム、岩谷麻優、木村花、林下詩美、朱里、ジュリア、鈴季すず、舞華。そして、渡辺桃は14人目の優勝者としてその名を刻んだ。
実力者だけに遅かった栄冠のようにも映るが、これも運命的なめぐり合わせなのだろう。正統派から悪の世界に身を置いても、渡辺には根強いファンがついている。
「この優勝は、早いも遅いもないタイミングだったのかな」と渡辺は冷静さを見せた。



