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「ミラ・ハヅキ…って誰?」日本人が知らない“昭和スポ根アニメ”大ヒットの謎『アタックNo.1』だけじゃない異国イタリアのバレー少女に刺さった名作 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byTakashi Yuge

posted2025/08/29 11:03

「ミラ・ハヅキ…って誰?」日本人が知らない“昭和スポ根アニメ”大ヒットの謎『アタックNo.1』だけじゃない異国イタリアのバレー少女に刺さった名作<Number Web> photograph by Takashi Yuge

イタリアのスポ根アニメ専門誌。表紙でひと際目立つセンターに『ミラ・エ・シロ』=『アタッカーYOU!』が配置されている(筆者私物)

『アタッカーYOU!』は、イトーヨーカドーを率いた小泉志津男による実録小説をモデルに制作され、1984年春からテレビ東京系列で放送されたスポ根アニメだ。同時期に少女漫画誌「なかよし」(講談社、作画・牧村ジュン)でも連載されている。

 主人公である田舎育ちの天然スポーツ少女、葉月優が転校先の名門校・氷川中バレー部に入部し、仲間やライバルたちと切磋琢磨しつつ全国大会に挑み、全日本チーム入りを目指す成長ストーリー。昭和ならではのパワハラ&セクハラシーン連発ながら、恋愛や親子関係に悩む青春模様も描かれ、全58話が放送された。

なぜイタリアで大ヒットしたのか?

 悲しいことに、日本国内での『アタッカーYOU!』の知名度はバレーアニメの始祖である『アタックNo.1』と比べると著しく低い。私事で恐縮だが放送当時、九州の小学生だった筆者の周囲に視聴していた人間はほぼ皆無だった。

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 ところが、縁もゆかりもないイタリアへ輸出された『アタッカーYOU!』は、現地向けに『ミラ・エ・シロ』と改題され、1986年2月に放送が始まるや否や爆発的大ヒットを記録した。バレー好きのみならず、国中のスポーツ少女たちがこぞってTVの前に釘付けになったという。

 番組タイトルの『ミラ・エ・シロ』とは、主人公(優=ミラ)と恋人役(立樹爽=シロ)の名を合わせたものだ。他の主要登場人物も軒並み欧州風に改名されている。

 番組が作られた約40年前は、スマホのある現在とちがい海外情報を入手する方法が極端に限られていた。見慣れない日本の人名をイタリアでそのまま放送すると、メイン視聴者層である子どもたちが奇怪に感じ、彼らの関心が肝心のストーリーから逸れてしまう恐れがあった。キャラクター名の欧州風アレンジは、より作品世界に親しんでもらうべく現地放送局が編み出した苦肉の策だったが、功を奏して『ミラ・エ・シロ』は瞬く間に話題になった。

 当時の正確な視聴率データは残っていないが、本放送終了直後、すぐに再放送が始まったというから相当の人気ぶりがうかがえる。21世紀の現在に至るまで『ミラ・エ・シロ』は民放地上波で再放送がくり返され、世代を超えた国民的知名度を誇るに至った。

【次ページ】 『キャプテン翼』よりも先にバズった?

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