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「転倒で学べることはない」“バイクIQ”に自信を持つ小椋藍が、過去になかった多くの転倒で直面している世界最高峰の壁

posted2025/08/20 11:02

 
「転倒で学べることはない」“バイクIQ”に自信を持つ小椋藍が、過去になかった多くの転倒で直面している世界最高峰の壁<Number Web> photograph by Satoshi Endo

オーストリアGP終了時点でランキング16位の小椋。シーズン後半での巻き返しはなるか

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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 最高峰MotoGPクラスで戦う小椋藍が、ルーキーなら必ず経験する“世界最高峰の壁”と戦っている。

 デビュー戦となった開幕戦タイGPでは、予選5位でスプリント4位、決勝レースは5位という鮮烈な成績で「さすがはMoto2チャンピオン」と日本のレースファンを大いに喜ばせた。しかし、それ以降は、世界の壁に阻まれる場面が増えてきた。

 小椋は開幕前に「MotoGPは世界チャンピオンが集まる最高峰クラス。なにかあったらすぐにビリになるクラス」と語っていた。その言葉通り、レース人生で初めて、セッションでのビリを経験。開幕戦の好走とは裏腹に厳しい戦いを強いられている。

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 Moto3(最高ランク3位)、Moto2(世界チャンピオン獲得)時代は、シーズンを通して8回から9回というのが彼の平均的な転倒記録だった。しかしMotoGPクラスでは、シーズン半ばにしてすでに11回の転倒。テストの転倒を含めると13回にも及ぶ。この数字がMotoGPクラスの厳しい戦いを反映している。

転倒が増えた理由

「今年転倒が多い理由は、簡単に言えば初めてのシーズンだから。バイクもタイヤも良くわかっていないときに、ちょうどいいところで走れていないからだと思う。だから、70%の走りで転んでるときもあるし、単純に限界を超えてというのもある。これが転倒の理由、というのは一概には言えないですね」

 MotoGPクラスのオフィシャルタイヤはミシュラン。伝統的にミシュランはハイパフォーマンスを発揮する反面、タイヤの温度管理がセンシティブで、コース上でもしっかり温度を上げる必要がある。

 シーズン序盤、小椋は「ヨーロッパラウンドに入ったら、そう簡単ではない」と語っていたが、まさにその言葉通りの結果が待ち受けた。特にフランスとイギリスでは不安定な天候の中で転倒が続き、イギリスでは転倒で右脚を負傷してイギリスGPと続くアラゴンGPを欠場した。

 開幕戦タイGPで素晴らしいリザルトを残した理由。そして、不安定な天候の中で苦戦する理由は小椋の乗り方にあるのだろう。スムースなライディングでタイヤに負担を掛けない分、レース後半にペースを落とさず好成績につなげる。対照的に、そのスムースな走りがタイヤの温度を上げることを妨げ、彼の言う「ちょうどいいところで走れない」結果となるのだろう。それが転倒につながるケースがほとんどだった。

【次ページ】 勝利に必要な努力と才能

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