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「中学生が軟式で145km…球場がどよめいた」“甲子園で脚光”沖縄尚学・末吉良丞の意外なルーツ「じつは“普通の軟式野球部”出身」恩師が語る中学時代 

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松永多佳倫

松永多佳倫Takarin Matsunaga

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photograph bySankei Shimbun

posted2025/08/16 11:04

「中学生が軟式で145km…球場がどよめいた」“甲子園で脚光”沖縄尚学・末吉良丞の意外なルーツ「じつは“普通の軟式野球部”出身」恩師が語る中学時代<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

1回戦で金足農業を完封した沖縄尚学の末吉良丞(2年生)。14奪三振の快投だった

球場がどよめいた「軟式で145km」

 当時、末吉が通っていた浦添市立仲西中学校の野球部顧問として3年間指導した大浜淳一が取材に応じてくれた。教員の大浜は、西武の與座海人を育てた指導者でもある。

「中学1年から身体はがっしりしていて球も速かったんですけど、コントロールはめちゃくちゃでした。3年間、コントロールをつけさせることに難儀しました。でも本人はとっても頑張り屋なのでフォームを微調整しながらコントロールを身につけていき、調子がいいときはど真ん中だけでも全然打たれない。1年の秋頃には(八戸学院)光星の監督さんがわざわざ沖縄に来て練習を見ていました」

 軟式でしっかりと身体を作りたいという思いと、何よりも仲西中の同期と一緒に野球がやりたかった末吉は入学当初からガッチリ体型で、すでに中学生離れした速球を投げていたという。その噂を聞きつけて、1年の時点で甲子園常連校の監督がわざわざ沖縄まで足を運ぶほどの逸材だった。

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 末吉が中学時代に145kmを投げたという話を県内で耳にしたことがある。その真偽を確かめるため、大浜に尋ねてみた。

「中学3年のときセルラー球場(那覇市営奥武山野球場)で公式戦をしたんですが、投球練習で145kmをマークしたんです。私は試合前に、絶対にスピードガン表示を見るなよと強く注意したんですけど、観客がどよめいたので見てしまったんですよね。まだ中学生なのでそれで調子に乗ってしまいましたね。コントロールがめちゃくちゃになってしまった。やっぱり軟式ボールは軽いので抑えられないというか、いろいろフォームを微調整していました。いいときは抜群にいいんですけども、悪いときは連続フォアボールやワイルドピッチも多かったです」

 軟式で145kmを投げるピッチャーがいるとなれば、県内外で垂涎の的となるのは当然だ。現中日の根尾昴(2018年ドラフト1位)が中学3年時に所属の「飛騨高山ボーイズ」で146kmを投げて一躍注目を集めたが、あくまでも硬式ボールだった。軟式では、2021年にドラフト1位で高知高校から阪神に入団した森木大智が中学時代に軟式球史上最速の150kmを出して話題となった。ドラフト1位の2人と比べても遜色ない大物感が末吉にもあると感じるのは、私だけだろうか。

 いずれにせよ、末吉は中学時代から枠に収まりきらない怪物候補として名を轟かせていたのだ。しかし速球投手にありがちなノーコンぶりに大浜も手を焼いた。

 コントロールをつけるためにフォームの矯正も必然だが、まずは体作りが先決であり、肥満に見えるほどの身体を絞るためにも徹底的に鍛えることにした。

続く

#2に続く
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