炎の一筆入魂BACK NUMBER
「極限まで軽くして、みんなの半分くらいの重さで…」カープのドラ3・岡本駿が体力不足を克服して掴んだ投手転向5年目のやり甲斐
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前原淳Jun Maehara
photograph bySankei Shimbun
posted2025/08/18 11:01
初勝利を挙げたのは5月13日のジャイアンツ戦。登板したのは12回裏だった
後日、マウンド上とは別人のように、冷静に振り返った。打たれたくないという思いが体を突き動かす。そんな精神力が成長と好結果を促している。
安定した投球を続けていたが、7月9日から約1カ月間は二軍で過ごした。降格直前の8日阪神戦で2失点したとはいえ、それまで4戦連続無失点。防御率も2点台を維持していたが、当初想定されていた「育成型」という側面を考慮しての首脳陣の判断だった。
「本人が気づかないところで疲労が溜まっていたと思う。トレーナーからは数値的に筋肉量などは落ちていないという報告だったんだけど、精神的な張りがあったと思う」
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菊地原投手コーチは、育成段階にある新人を疲弊させてはチーム方針に反すると判断した。
二軍で手にした新たな武器
二軍では登板日をある程度決めた上で、強化メニューが組まれた。アナリストとデータや映像で確認しつつ、投球時の重心が高くなる改善点も見つけた。
さらに、5月に投じた1球が簡単に打たれたことで、封印せざるを得なかったスライダーの改善にも着手した。野村祐輔三軍コーチ兼アナリストらと意見交換しながら、横変化ではなく縦変化の“縦スラ”に改良。一軍復帰後、まだ新球種は打たれていない。
チームは将来的な先発転向も視野に入れ、今後はイニングまたぎやロングリリーフとしての起用も検討している。そんなプランを伝え聞くと、本人は苦笑いしながらかぶりを振った。
「今はリリーフが楽しくて、充実しています。大変なポジションですが、先発からのバトンをつないでいくことにやりがいを感じています。いずれは勝ちパターンで投げられたらいいなと思っています」
本人も首脳陣も、まだ投手としての完成形を描き切れていない。それこそが、岡本駿の可能性の大きさを物語っている。
