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「極限まで軽くして、みんなの半分くらいの重さで…」カープのドラ3・岡本駿が体力不足を克服して掴んだ投手転向5年目のやり甲斐
posted2025/08/18 11:01
初勝利を挙げたのは5月13日のジャイアンツ戦。登板したのは12回裏だった
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前原淳Jun Maehara
photograph by
Sankei Shimbun
成長しながら結果を残す──。優勝争いから脱落し、クライマックス・シリーズ争いを繰り広げる広島の中で、理想的な一歩を踏み出した選手がいる。ドラフト3位ルーキー、岡本駿だ。
育成契約を含めた球団の大卒新人5人で唯一の開幕一軍入りを果たした。8月15日時点で、チームでは勝ちパターン入りする中継ぎ5投手に次ぐ29試合に登板し、1勝1敗、1ホールド、防御率2.63の成績を残す。12球団の新人ではヤクルト荘司宏太の30試合に次ぐ登板数だ。
岡本は"バリバリの即戦力"として評価されて入団したわけではない。大卒とはいえ、球団の見立ては育成型だった。
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理由のひとつは投手歴にある。城南高では内野手で主にショートを守り、甲南大進学後に投手に転向した。本格的に投手となって今年で5年め。変化球の精度やフォームの再現性、投手としての経験値などが課題とされていた。完成度ではなく、ポテンシャルを買われての入団だったのだ。
不安視されるほどの体力
さらに筋肉量や体力の低さも懸念材料だった。1月の新人合同自主トレでの各種測定では、ほかの大卒新人よりも数値が低く、広島の春季キャンプの練習量についていけるか不安視されていた。実際、キャンプ中のウエートトレーニングでは重量が軽く設定され、中には半分の負荷に抑えられたメニューもあった。
「極限まで軽くして、みんなの半分くらいの重さでスタートしました。一軍に残るためにはウエートトレーニングはしっかりやらないといけない。体づくりが一番、大事。大学時代は選手個々に任されていたのですが、やっていなかったんです」
恥ずかしそうに頭をかく岡本は、意識を向けていなかった課題に正面から向き合った。一軍生き残りへ強い危機感を抱き、どれだけ重量が軽くとも周囲の目など気にせず、トレーニングルームに通い続けた。
ただ実戦に入ると、ほかの選手と同じように行う朝トレーニングが投球に大きく影響した。
