炎の一筆入魂BACK NUMBER

「極限まで軽くして、みんなの半分くらいの重さで…」カープのドラ3・岡本駿が体力不足を克服して掴んだ投手転向5年目のやり甲斐 

text by

前原淳

前原淳Jun Maehara

PROFILE

photograph bySankei Shimbun

posted2025/08/18 11:01

「極限まで軽くして、みんなの半分くらいの重さで…」カープのドラ3・岡本駿が体力不足を克服して掴んだ投手転向5年目のやり甲斐<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

初勝利を挙げたのは5月13日のジャイアンツ戦。登板したのは12回裏だった

「みんなは朝やっているんですけど、僕は朝やると疲れてしまって、試合で100%の力を出せない。トレーニングは妥協せずにやりたいので、試合後にやるようにしました」

 筋力も体力も十分ではないため、普通のやり方では一軍で生き残れないと感じたのだ。

 ウエートルームでは頼りないルーキーだが、マウンドでは力強かった。初の実戦となった2月19日のロッテとの練習試合では、3者連続三振で鮮烈デビュー。オープン戦初登板となった同24日の巨人戦も無失点。3月14日のロッテとのオープン戦では自己最速を2km更新する最速151kmを計測した。実戦で好パフォーマンスを続ける姿に、首脳陣は評価を上方修正していった。菊地原毅投手コーチは当時を振り返る。

ADVERTISEMENT

「当初は育成型という考え方ではあったんですけど、『型にはめずに見てみよう』とキャンプインした。ブルペンからいいものを見せてくれていて、実戦でも自分の球を投げ切れていた。十分一軍で勝負できる技術面が、体力がない点を上回っていた」

 オープン戦最終戦となった3月23日のソフトバンク戦で初失点するまで6戦連続無失点。自らの力で前評判を覆し、開幕一軍を勝ち取った。

投球を支える精神力

 キャンプで習慣化したウエートトレーニングは、シーズンに入っても継続した。体重は大学時代から8kg増。筋肉量は3~4kg増えるなど、肉体面の成長は数字にも表れている。

 登板は主にビハインドの場面だが、延長12回のマウンドを4度任された。今季チームの引き分け5のうち、敵地での引き分け2は岡本が“最終回”を抑えた結果だ。初勝利も初黒星も、延長12回だった。

 精神的な強さが投球を支える。4月20日の阪神戦。坂本誠志郎の頭部に抜けたカットボールを当てて危険球退場となる直前、前川右京のセンター前に抜けそうな打球に右手を伸ばした。

「絶対に抑えようという気持ちで自然と動きました。でも、あれはケガにつながるプレーなので、次からは注意しないと」

【次ページ】 二軍で手にした新たな武器

BACK 1 2 3 NEXT
#広島東洋カープ
#岡本駿
#菊地原毅

プロ野球の前後の記事

ページトップ