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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
寺地拳四朗の誤算…“まさかの敗北”そのとき何が起きていたのか?「油断はまったくなかった」先制ダウンも…名参謀がいま明かすサンドバル戦のウラ側
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/08/13 17:02
7月30日、リカルド・サンドバルに敗れて2本のベルトを失った寺地拳四朗。参謀の加藤健太トレーナーに“まさかの敗戦”の内幕を聞いた
寺地は距離を取りながらジャブ、ワンツーで攻め、ゆさぶりをかけていった。サンドバルはガードを固めて寺地の入り際にジャブ、右ストレートを狙った。寺地がプレスをかけ手数を出しているものの、サンドバルが危険なパンチをカウンターで打ち込み、それを寺地が被弾するシーンもあり、気の抜けない展開だ。4回終了時のジャッジはサンドバルのフルマークが1人、2ポイント差が1人、残りがイーブン。挑戦者がポイントでリードした。
「油断はまったくなかった」が…寺地陣営の誤算
寺地陣営にとって誤算だったのはサンドバルの戦い方だ。加藤トレーナーが「もう少し出てくると思っていた」と振り返ったように、好戦的なサンドバルが寺地のスピードに惑わされず、ガードをしっかり固めて「待ち」のボクシングに徹したのだ。
これによって寺地のワンツーはなかなか決まらず、「もらわない距離と当てる距離のすり合わせがうまくいかなかった」。スコアが示すように、チャンピオンにとって重苦しい展開と言えた。
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「相手が前に出てくるのに合わせてボクシングを作っている時点で後手に回っていたのかもしません。戦術的にはワンツーに傾倒し過ぎたのが良くなかったのかなと思います。角度をずらしたり、タイミングをずらしたりしてワンツーを当てていけばポイントが取れるし最終的には倒せると考えていました。サンドバルに有効だと思ったし、それが拳四朗の強みでもあるので」
寺地はこの試合をクリアし、将来的にはスーパーフライ級に上げて3階級制覇を目指そうと目論んでいた。ターゲットは2団体統一王者、ジェシー“バム”ロドリゲス(米)だ。こうした野望を抱き、サンドバル戦は「圧勝したい」と口にしていた。寺地陣営に油断はなかったのか。加藤トレーナーはこう説明する。
「油断はまったくなかったです。むしろ危機感がありました。というのも自分は映像を見て嫌な相手だなと思ったんですよ。これといって特徴がなく、何を強みにしているか分かりにくい。接近戦を得意にしてるんだろうな、くらいしか分からない。あとはスタミナがあって真面目で気持ちが強い。つけ入るスキが少ない相手という印象でした」

