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「1600万円の赤字」からウナギ・サヤカが再出発…まさかのドーム屋外興行で見えた“らしさ”「(これまでは)ちょっと無理してた」「見たか朝倉未来!」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/08/09 17:20
「東京ドームシティ アトラクションズ バイキングゾーン芝生広場」で自主興行を開催したウナギ・サヤカ
この試合には特別ルールが設定されていた。絶叫マシーンに乗ってからでないと決着(3カウント、ギブアップ)が認められないというもの。殴り合いながら無料観戦客の間を縫って階段を登り「フライングバルーン」に乗り込む鈴木とウナギ。さらに観客数名も。最前列購入の特典だという。
回転しながら水道橋の空に舞い上がり、鈴木が思わず吐き気を催して形勢逆転。ウナギらしい展開だったが、それにきっちり付き合った上で勝つのが鈴木の懐の深さだ。最後は東京ドームをバックにゴッチ式パイルドライバー。考えてみれば鈴木とアジャは東京ドーム興行のメインを張ったこともある。そんな大物を、ウナギは“東京ドーム前広場”に連れてきてしまった。
「地方の大会でもみんな知ってるじゃないですかアジャコング、鈴木みのるって。それに(これまで対戦してきた)長与千種、ジャガー横田、井上京子。もういいよって思っても、みんな知ってるんです」
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そんな状況を変えて世代交代をしなくてはいけない。しかしドーム興行には一緒に、とも思っている。プロレスを世間に届かせるためには、レジェンドたちの力も必要だ。
東京ドーム進出も「私は絶対に諦めない」
両国国技館大会の赤字は本当に悔しかった。でもマイナスを取り戻せる気しかしないし、今まで以上に「プロレスでみんなを幸せにする」ことを考えるようになった。ドーム進出だってまったく諦めていない。そのためには、プロレスを知らない人たちへのアピールが欠かせない。
SNSであれば、おすすめ機能で情報が偏りがちなXよりもYouTube、TikTokが効果的だとウナギは考えた。他ジャンルのYouTuberと「コラボ」することで新たなファン層にリーチできる。実際、魔裟斗チャンネルとコラボした動画は300万再生を記録した。
概念としても現実としても「柵の外」を志向しつつ、らしさは失わない。選手やスタッフ、「柵内」のファンとは一緒に遊んでみせる。試合後のウナギはあらためてドーム進出を宣言し、スターダムをクビになっても1600万の赤字を抱えても何も諦めていないのだと言った。
「生きてて苦しいこととか負けたって思うことなんて数限りなくあるわけで。でも私は絶対に諦めない。なのでみんなも、もう絶対無理だって思っても歯を食いしばって、一緒に闘いましょう。“やらないのがお前ら、やるのがウナギ・サヤカ”。そういうことだよ。みんなもやりたいこと必ず成し遂げて、東京ドームに報告に来てください」
見事に大会を締めたと思ったら、続けて「バイキング乗るぞ!」。絶叫マシーン「バ・バ・バ バイキング」に、今度は出場選手、レフェリー、リングアナ全員で。アジャも鈴木も嫌がりながら付き合って、ウナギ・サヤカでしかありえない自主興行が終わった。



