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「1600万円の赤字」からウナギ・サヤカが再出発…まさかのドーム屋外興行で見えた“らしさ”「(これまでは)ちょっと無理してた」「見たか朝倉未来!」
posted2025/08/09 17:20
「東京ドームシティ アトラクションズ バイキングゾーン芝生広場」で自主興行を開催したウナギ・サヤカ
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
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Norihiro Hashimoto
8月2日(土)、東京都心の最高気温は35.1度だった。いわゆる猛暑日というやつだ。そんな日に野外でプロレスの試合があった。“傾奇者”ウナギ・サヤカの自主興行、昼夜2大会。会場は「東京ドームシティ アトラクションズ バイキングゾーン芝生広場」である。
観覧車があって絶叫マシーンがあって東京ドームも。その真下の広場にリングが組まれた。ロケーションは最高。しかしマットの黒い部分は熱がたまって熱い。エプロンの白い部分は日差しを反射してやっぱり熱い。試合をする(見る)コンディションとしては最悪。しかしこれは“奇跡”の賜物だった。
日本には台風が接近していた。雨はもちろんだが強風となればプロレスをやるのも見るのも無理だ。ウナギは会場側と相談し、隣接する屋内会場・プリズムホールも予約した。「二重借り」だ。その上で「(台風の進路が)曲がれ曲がれ」と念じた。
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そうしたら、本当に台風がそれた。まさに奇跡だ。ただそれも、会場側との信頼関係の中でできる限りの準備をしたからこそだとウナギは言う。単純に「荒天中止」とするわけにはいかなかった。これはウナギにとって大事な出直しの場だったのだ。
「1600万円の赤字」からの再出発
4月26日、ウナギは両国国技館で自主興行を開催した。スターダムを「クビ」になって以来フリーとして活躍し、昨年1月から後楽園ホールで自主興行を始めると成功を収めた。特に今年2月の里村明衣子戦、1試合のみのワンマッチ興行は超満員札止めに。女子初の後楽園ワンマッチ、「ウチがやろうと思ってたのに」という業界からの声に、ウナギはこう返した。
「やらないのがお前ら、やるのがウナギ・サヤカ」
目指すは東京ドーム。しかしステップアップのはずの両国大会は1600万円の赤字を出してしまう。翌日にスターダム横浜アリーナ大会があり、1カ月前には引退を控えた里村が率いるセンダイガールズのビッグマッチも。そのことが観客数に影響したのかもしれない。
また冠協賛をはじめとする大口スポンサーの不在、豪華なセット、自主興行ゆえ選手・スタッフにすべて“単発”のギャラが発生してしまうということもある。団体という形なら、そこは年間のランニングコスト(給料)でまかなえるのだろうが、それができなかった。
マイナス1600万からの再出発。ウナギはこれまでの自分について、こう語った。
「ちょっと無理してたんですよ。“ウナギ・サヤカをやる”ためにはデカいことをって。でもウナギ・サヤカらしいのは1人でも多くの人にプロレスを届けて、プロレスで幸せにすることだよなと思いました」


