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甲子園でいきなり“強風”ハプニング「これ失敗したら、切腹ちゃう?」観客ザワザワ…酷暑の高校野球、現地で私が見た異変「昨年とここが変わった」
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生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/06 17:25
甲子園開会式、いっせいに給水する選手たち
浜風に乗ったボールは流れに流れた。フェンス越えになるんじゃないかと不安になったが、無事、始球式のボールは外野の芝生、左中間に落ちた。盛大な拍手が起きたのは、最初の失敗があったからだろう。スタンドには一体感があった。
そして始球式では、中京大中京の女子軟式野球部の森本愛華さんがマウンドに上がり、ビシッと球を投げて雰囲気が締まった。
拍手が大きかった“人気校”は?
ハプニングが起きた始球式だったが、それに先立って、午後4時から行われた開会式。
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暑さ対策のため、初めて夕方開催となったが、一塁側のファウルグラウンドには影が落ち、そのエリアに吹奏楽、合唱のメンバーが陣取る。夕方開催ということで、これまでとは雰囲気が違ってしまうのでは? と多少の不安はあった。実際、外野スタンドはガラガラで少々、さびしかった。
しかし、選手が入場してくると、今までとは何も変わらない甲子園がそこにあった。
拍手の大きさは、人気のバロメーターである。昨年の優勝校として先頭で入場してきた京都国際、春夏連覇を目指す横浜、そして地元・兵庫の東洋大姫路に大きな拍手が送られた。大谷翔平の母校である花巻東、3年前の優勝校、仙台育英も人気がある。
また、北海、県岐阜商の帽子が白に変わっているのに驚いた。特に県岐阜商は岐阜大会まで紺の帽子だったような……。
両校とも、今回の甲子園から暑さ対策で白帽子に変更したという。暑熱対策はユニフォームのデザインにも影響を及ぼし始めた。一方で、青藍泰斗の目に鮮やかなブルーのユニフォームも、見ていて楽しかった。
「昨年は救護室に運ばれた人もいたが…」
開会式は40分強でお開きとなり、5時30分から第1試合の創成館と小松大谷の試合となる。
今大会から試合前のシートノックが選択制となった。やっても、やらなくても良くなったのだ。実施するにしてもこれまでの7分間から5分間に短縮され、ここにも暑熱対策は及んでいる。
両校のシートノックを見た後、売店に買い出しに行くと、以前に取材した明治大学のOBに会った。
「去年の昼間の試合に比べると、選手たちの動きにキレがありました。やっぱり、人間は暑いと動きをセーブしてしまうんですよ。自分の身を守るために。それに比べると夕方は涼しいし、今日は風も強いので、選手たちは昼に試合をするよりもだいぶ動きやすいと思います」


