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甲子園でいきなり“強風”ハプニング「これ失敗したら、切腹ちゃう?」観客ザワザワ…酷暑の高校野球、現地で私が見た異変「昨年とここが変わった」
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生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/06 17:25
甲子園開会式、いっせいに給水する選手たち
この言葉からも、夕方に試合を開始する意味が理解できる。
今大会では朝と夕方の2部制を第6日まで拡大した。日本高等学校野球連盟のホームページには、その理由をこう記している。
「選手の熱中症疑いは各代表校の大会初戦で起きやすい傾向が出ており(106回大会では試合中発症の7割以上が初戦)、大会序盤をなるべく2部制として負担軽減を図ります」
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体感としては、夕方からの試合の方が消耗度は少ないように思える。
さて、開会式後の試合は創成館エース、身長165センチの森下翔太(なんだか甲子園球場にふさわしい名前)が153球を投げ、9回には明らかにギアを上げて、13三振を奪っての完投(長崎大会で35回あまりを投げて42三振を奪った実力は伊達ではなかった)。
もしも、日中の試合だったら消耗度合いも違い、ギアを上げることが出来たかどうか。少なくとも、森下にとっては5時半プレーボールを味方につけたように思える。
そして観戦する側にとっても負担が少ない環境だった。午後3時半に入場し、甲子園球場を後にしたのが7時40分過ぎ。4時間以上滞在したことになるが、去年までとは消耗度がまったく違った。昨年は1日に4試合行われる日に観戦に行ったが、日中の2試合を見るのが限界だったし、救護室に運ばれる人も目撃した。
しかし、この日は終わってもさほど疲れを覚えることなく、友人たちと食事に向かう元気も残っていた。2部制の導入は選手たちにとってだけでなく、観客にもだいぶやさしい仕組みだと思う(ただし、まだ改善点はある。1日4試合の日に限っては途中退場を1度でよいから認めて欲しい。これによって、だいぶ消耗度が違う)。
1日の終わり、宿に戻る阪急電車では、開会式でプラカードを持っていた生徒だろうか、市立西宮高校の制服を着た生徒さんたちが、固まって談笑していた。なんだか微笑ましい光景だった。
さあ、いよいよ夏の甲子園が始まった。
