ボクシングPRESSBACK NUMBER

「恐怖心を打ち払い未知の自分を出せた」中谷潤人が語る“来たるべき井上尚弥戦”「どんな状況でも対応するのが井上選手」「戦う場所は気にしていない」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byShigeki Yamamoto

posted2025/08/20 11:06

「恐怖心を打ち払い未知の自分を出せた」中谷潤人が語る“来たるべき井上尚弥戦”「どんな状況でも対応するのが井上選手」「戦う場所は気にしていない」<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

WBC・IBF世界バンタム級統一王者となった中谷潤人が、“来るべき井上尚弥戦”について語った

 乗り越えたものが大きければ大きいほど、得たものも大きい。

「雑になった部分はあったにせよボクシングの幅が広がったところを見せることができたかなとは思います。そういうのもできるんだって未知な自分を出せた。(1ラウンドから前に出て全開で行くという)やったことがないものに対する不安、恐怖心を打ち払えたことで、自分自身これから何をトライするにしてもやっていけそうだなと感じることができました」

 心にあった不安と恐怖心と日々向き合い、徐々に自信とワクワク感の割合が増えていく。両感情のせめぎ合いは、ボクサーとしてさらに成長させる養分ともなった。

ADVERTISEMENT

 いつもとは違う戦い方をすることでボクシングの幅を広げられた反面、新たな課題も見つかった。中谷にとってはそれも大きな収穫になった。

次につなげられる反省点

「大振りして、力みがあったのもそうですが、西田選手が切り替えて前に出てきたときにガードの位置、パンチの切り方など(対応する)準備がしっかりできていなかったところがありました。反応の速さ、切り替えの速さをもっと頭に入れておくべきだったな、と。次につなげられる反省点が出て、また質を高めていけるので本当にいい経験になりました」

 3、4ラウンドは自分ではペースを握っていると確信を持ちつつも、ジャッジの支持を集められなかった。改善の余地がまだまだあることをプラスに捉えている。

 来春東京ドームでの対戦が浮上している井上尚弥がリングサイドで見守っていた。試合後自身のSNSで「スーパーバンタム級戦線へようこそ こんな強い日本人がいたらワクワクしちゃうよな」とつづっている。周りからそのことを伝え聞いたとき、「純粋にうれしかった」という。

 井上がラスベガスで行なったラモン・カルデナスとの一戦は、映像でライブ観戦した。井上のダウンシーンに驚いたが、そこから落ち着いてTKOで仕留めた展開はさすがだと思えた。

「(ルイス・)ネリ戦と違って、(ダウンは)効いていたように見えました。でもそこから組み立て直したじゃないですか。1回もらったパンチは、もうもらわない。修正能力が凄いし、どんな状況でもまさに対応していくのが井上選手だなって思います」

井上尚弥戦へ「戦う場所は特に気にしていません」

 ネリ戦というワードが出たので、こんな質問をぶつけてみた。

 井上尚弥には4万3000人を集め、熱狂の東京ドームで試合をした経験がある一方、当然ながら中谷にはない。それはディスアドバンテージにならないか、と。

 中谷は表情の色を変えずに、こう応じた。

【次ページ】 自分らしいチョイスをしていきたい

BACK 1 2 3 NEXT
#中谷潤人
#ダビド・クエジャル
#井上尚弥
#西田凌佑
#ルディ・エルナンデス

ボクシングの前後の記事

ページトップ