「序盤で…敗着級ミスです」「この内容は情けない」33歳棋士がタイトル初挑戦2局目でガク然「でも藤井聡太棋聖が盲点を突いたのは事実です」 

　それに棋聖戦の直前に相居飛車の定跡を覚えたとしても、そこを主戦場にしている藤井に太刀打ちするのは難しい。それこそ付け焼刃というやつだ。杉本も「この先もずっと振り飛車を指すかはわからないが、この五番勝負は振り飛車でいくと決めていました。四間飛車のおかげで棋聖戦に出られたようなものなので」と語る。またアマチュアは振り飛車のファンが多く、藤井の対抗形を待ち望んでいる者が多い。

　どれほど苦しかろうと、やるしかない。

　杉本は後手四間飛車に勝負を託したのだが――。

自分の本命とは違う変化を藤井棋聖が選んできて

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――第1局から第2局までの2週間はどう過ごしていましたか？

「順位戦で久々に公式戦を勝つことができたので、少しいい気分になりました。負けが込み始めてしまった上に、内容もよくない将棋が続いていたので」

――それはなぜでしょう。挑戦が決まって喜びすぎたのですか？

「それもあるんでしょうね。自分は甘い人間なので（笑）」

第2局の前日検分　©日本将棋連盟

――その勝利は第2局に向けて精神的に好材料になったと思うのですが、懸念だった後手番の作戦準備はいかがでしたか？

「番勝負が決まった時から後手番をどうするかをずっと考えていたんですけど、実際に厳しかったです。自分は同じ戦法を採用し続けるタイプなので相手に予想されている上に、研究すればするほど、どの変化も厳しく感じるという悪循環に陥っていました」

――AIの評価値を見ていると、第2局は杉本さんが序盤で失敗したように見えますが？

「事前に悩みすぎた弊害というわけではないんですけど、戦法を潰されるかもしれない直線の変化を終盤まで掘ることに注力しすぎて、手薄な変化を突かれた時に対応ができませんでした。やはり先手番の研究とは大分感覚が違いますね。結果的に自分の本命とは違う変化を藤井棋聖が選んできて、自分はその定跡をちょっと勘違いして覚えていたんです。それで序盤で間違えてしまって、いいところなく敗れてしまいました。後手番の辛さが集約されたような負け方でしたね」

序盤の1分で指した手が…ミスとしては初歩的でしょう

――具体的にどういう誤算があったのですか？

「先ほども言ったように、藤井棋聖がちょっと予想と外れる構えをしてきたんです。それに対する私の認識がややおぼろげで、類型と勘違いしてしまいました。具体的には42手目で△4四銀と立った手があるんですけど、これが1局を台無しにしたひどい手でした。確かに類型だと出てくる手なんですけど、本局の形だとありえない手です。なんというか頭をもう少し使ってほしいなと自分に対して思いましたね。タイトル戦でこういうミスをやっちゃうのかなと思ったら悲しくなりました」

――AI時代ならではのミスとも言えるのでしょうか？

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