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卓球・張本智和が異例の表明「選手に配慮があるリーグであってほしい」“独自ルール問題”最大の論点とは? SNSの言葉に表れた“いら立ち”の背景
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/06 11:01
SNSでTリーグに対する思いを吐露した張本智和(写真は今年1月の全日本卓球)
「どんなおかしなルールだとしても、負けたら選手は落ち込みます。心の中ではそんなはずはないとわかっていても、負けた事実に落ち込みます。海外のトップ選手が『日本に来てこんなルールで負けて、Tリーグにはもう行きたくない』となったらリーグの未来はありません。Tリーグを見にきてくれるお客さんに本当の卓球の試合をお見せしたいです。そして、お客さんを楽しませることも大切ですが、それと同じぐらい選手にも配慮があるリーグであってほしいです。何も無理なお願いをしてるわけではないです。普通の試合がしたいだけです。思うことはもっとたくさんありますが、結局言いたいことは1つだけです。世界最高峰のリーグを作りたいのに、世界最高峰の選手たちだけに不利なルールでどうするんですか。」
さらに、Tリーグルールのもとでトップ選手に勝つことで満足し、選手が海外で勝つための努力をしなくなる、選手をかえって苦しめることになっているのでは、とも投げかけている。
“ルールへのいら立ち”考えられる原因
張本の言葉が示唆するように、Tリーグのルールでは地力の違いが相対的に表れにくく、通常よりも番狂わせが起きやすくなることは以前から指摘されてきた。他の競技でもそうだが、序盤や前半はいわゆる格下側がリードを奪っても、試合が進むにつれて上位側がひっくり返して順当な結果に終わることがしばしばある。時間をかけて勝負したほうが実力の差は明確に反映されるからだ。
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Tリーグは“強化”を目的の一つとしているが、番狂わせが起こりやすいルールのもとで上位選手に勝てても、強化につながるのかという問題はある。そして日本のエースであり、世界のトップを争う位置にいる張本にとって、地力が発揮しにくいルールへのいら立ちもあるのではないか。
そもそもなぜ独自ルールが設けられているのか。その全体を捉えれば、“試合時間全体をコントロールし、むやみに長引かせたくない”という結論に行き着く。逆転劇が生じやすくなることも想定内ではあるだろう。リーグを運営していくにはエンタテインメント性、興行という面ももちろん重要で、そこに独自ルールが生まれている背景がある。

