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田口壮「阪神に行きたくない10カ条」を阪神出身スカウトに仕掛けられ…「阪神に行きたい」萩原誠1位指名に流れた阪神の“無難”という伝統
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/08/04 17:01
阪神入りを熱望していた萩原誠。だが結果的には阪神特有の重圧に打ち勝てず、プロ通算でわずか38安打と大成できなかった
世間の声で動かされてしまう阪神
オリックススカウト・谷村がそう強調するのは、自らのキャリアを振り返っての実感でもある。
自分が社会人の鐘淵化学時代、都市対抗大会で活躍した途端に「地元の逸材を獲れ」とばかりに、関西のマスコミが取り上げ、周囲から騒がれるようになったからだ。
田口は阪神に対して拒否姿勢、一方で萩原は「行きたい」と熱望している。
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「ええやっちゃ、萩原。甲子園でも打ったやん」「そんな子は、1位でいったれや」
こうした“世間の声”に、阪神は敏感なのだ。
さらに、田口を強行指名して入団を拒否され、萩原を他球団に指名されてしまうという最悪のシナリオに陥った時の、世間からのマイナスの反応を過大に恐れてしまうのだ。
阪神の機微を知る谷村の“切り崩し戦略”
谷村は当時の関西地区で、スカウト1年目だった。だから、渋谷高・中村紀洋も「当然見に行ったで」と、当時の印象を振り返ってくれた。
「初球からブンブン丸やったわ、ごっついスイングや。こんなんでええねん。これをドラフトのケツ(下位指名の意)で獲っとこか、でええわけや。『中村を5位とか6位で獲って、大化けしたらよろしいやん』というスカウトがおらんというこっちゃ。(阪神が萩原を指名した)そこに話は戻るけど、萩原は『まとまったヤツがおる』ということやわな。そうでないと、会社の上から許可やな、ゴーが出んわけや」
谷村は、そうした“阪神の機微”を、阪神にいたから分かっているのだ。
だからこそ、田口1位、萩原2位という阪神のベスト戦略を切り崩すことができると踏んだ。「別に俺、何もしてへんで」と谷村はトボけるが、関学大OBという、田口との太いパイプも存分に生かしたのだ。

