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田口壮「阪神に行きたくない10カ条」を阪神出身スカウトに仕掛けられ…「阪神に行きたい」萩原誠1位指名に流れた阪神の“無難”という伝統
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/08/04 17:01
阪神入りを熱望していた萩原誠。だが結果的には阪神特有の重圧に打ち勝てず、プロ通算でわずか38安打と大成できなかった
阪神志望の萩原は2位でも獲れたはず
萩原は社会人の大和銀行にも内定していたが「阪神だったら考えさせてもらいます」。それが、高校生ができる最大限の“逆指名表明”でもあった。
「掛布さんに憧れていました。タテジマのユニホームを着るのが夢でした」
大阪生まれの大阪育ち。1985年の日本一の時には小学6年生で、大阪桐蔭高で甲子園を制覇した4番打者。それこそ、阪神との縁だらけだ。球団事務所には、阪神への拒否姿勢を見せた田口ではなく「萩原を獲れ」というファンからの電話が鳴りやまなかったのだという。
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こうなれば、萩原を2位で固め、それ以外ならプロには行かないと表明させればいい。そうすると、競合覚悟で1位に田口を指名できる。
外したら萩原を1位に上げればいいだけで、うまくいけば田口、萩原の地元勢の両獲りすらできる。それこそが、阪神の“最上のドラフト戦略”だろう。
強引でも田口を指名すべきだった?
ところが、直前になって阪神は軌道修正する。
「田口回避、急転1位萩原 熱烈ラブコールに応えて将来性買う」
ドラフト当日の11月22日の紙面で、スポーツニッポンがスクープした。
ただ、萩原に次ぐ2位で、阪神は日本石油の遊撃手・久慈照嘉を指名している。1992年の新人王にも輝いた逸材をリストアップできていたのだから、むしろ、外れた時の備えはできていたのだ。
2012年の阪神ドラフト1位、大阪桐蔭・藤浪晋太郎は大阪生まれの大阪育ち。2020年の佐藤輝明も、兵庫・西宮で生まれ育ち、関西の強豪・近大で力をつけた。
「それを言うなら、昔の田口も一緒なんや。そやろ? プロでレフトに回ったけど、あの時点では、ショートとしてフットワーク、出足もええし、肩もええし、スローイングもよかった。その時は、強引にでもいかなアカンわ、言うたらな」

