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[指揮官不在のアテネ五輪]2003-04 使命と重圧に燃え尽きて

posted2025/07/29 09:00

 
[指揮官不在のアテネ五輪]2003-04 使命と重圧に燃え尽きて<Number Web> photograph by Asahi Shimbun

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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Asahi Shimbun

野球界の威信をかけて、史上初のオールプロで編成された長嶋ジャパン。しかし、並々ならぬ覚悟で日の丸を背負った監督を突然の病魔が襲う。アテネ五輪を戦った男たちが、各々の思いを明かす。

 2003年11月5日、札幌ドーム。試合前のロッカールームは重い沈黙に包まれていた。日本代表のユニフォームに袖を通した選手たちのある者は目を瞑り、ある者は虚空を見つめて、その重圧と戦っていた。

 '04年アテネ五輪の出場権をかけた「アジア野球選手権」決勝リーグの初戦。相手は準決勝リーグを勝ち上がった“格下”の中国だったが、その力の差は関係なかった。

「長嶋ジャパン」が、初陣を迎える。

 選手たちの使命はただ一つ、勝利だった。全試合に勝つ。しかも、圧倒的に。各球団から集う21人の精鋭の一投一打に、その重責がかかっていた。

 主軸を担った高橋由伸が振り返る。

「アテネで金メダルを獲る、という大目標を掲げて、初めてオールプロでのぞむ日本代表。しかも長嶋茂雄さんが監督をやるとなれば、選手としても失敗は許されない。代表に選ばれた時から、喜びの一方でこれはえらいことだと思っていました」

 大会直前に福岡で行われた壮行試合ではプロ選抜に1-3とまさかの完敗を喫し、緊張感はさらに高まった。主将の宮本慎也は、札幌入りのタイミングで選手だけのミーティングを開いた。過去に国際試合を戦ったことがある高橋は、宮本に「経験を話してほしい」と促され、松坂大輔と共に選手全員の前に立った。

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