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涙の落選から1年…天才リベロ小川智大(29歳)が再び五輪を目指すと決めた日「1個ずつやっていこうと、やっと思えるようになった」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuki Suenaga
posted2025/07/22 11:04
再びオリンピックの舞台を目指すことを決めたバレーボール男子日本代表のリベロ小川智大(29歳)
VNL予選ラウンドの12試合中11試合でスタメン出場の機会を得た。ここまで多くの出場機会を得ること自体がほぼ初めて。大会全体でもディグの成功率で3位にランクインしている。何より、小川らしさを発揮しているのが“声”だ。
守るだけでなく点を獲らせる――小川の声に何度も「助けられてきた」と言うのは、セッターの永露元稀だ。
アメリカ戦で2セットを先取して迎えた第3セット中盤、ミドルブロッカー佐藤駿一郎がネット上で触ったボールを「オーバーネット」と判断された。だが、チャレンジの末にノーカウント。その直後、永露が選択したのが佐藤の速攻だった。鮮やかな一打で17ー15とリードした日本はその後も連続得点で点差を広げるのだが、その一打の裏に小川の声があったと永露が明かす。
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「いい状態で佐藤が入ってくるのが見えたし、コールも聞こえたんですけど、それにくわえて、小川の『今、ミドル、真ん中行け』という声が聞こえた。改めて真ん中(のブロッカー)を確認したらマークが甘かったので、自信を持って上げることができました」
VNL千葉ラウンドを終えた男子日本代表は中国に移動して、30日から始まるファイナルラウンドに臨む。秋にはフィリピンで開催される世界選手権も控えている。
代表合流直後で出場機会が少なかった山本も状態や調子を上げてくるであろうことは、言うまでもない。ただ、小川の言葉通り、できることは一つずつ積み重ねていくことだけ。
「東京オリンピックを目指すと言っても、チームの土台ができていて、現実味がなかったし、(当時は)自分の実力がなかったのもわかっていました。そこから、スキルが上がってパリを目指して思いきりやってきたけど、届かなかった。ロスまでもきっと同じことを繰り返して、続けていくだけなんですけど、それでもやり続ける。またここからですね」
今はまだ、新たな目標へ向かう序章に過ぎない。


