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ウィンブルドンテニス決勝で世紀の「0-6、0-6」敗戦に涙…グラフの全仏「こんなに早く終わって申しわけない」事件以来の「大惨事」はなぜ起きた?

posted2025/07/21 17:02

 
ウィンブルドンテニス決勝で世紀の「0-6、0-6」敗戦に涙…グラフの全仏「こんなに早く終わって申しわけない」事件以来の「大惨事」はなぜ起きた?<Number Web> photograph by Getty Images

ウィンブルドンでは114年ぶり、四大大会全体でも1988年全仏以来という決勝戦「ダブルベーグル」負けを喫したアニシモワ23歳はスピーチで涙をこらえきれない

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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Bagel=(1)ベーグル。生地を茹でてから焼く、リング状の堅いロールパン。(2)<米俗>テニスの試合で1セットのスコアが6-0で終わること。

 多少の差異はあるものの、最近の英和辞書の多くにはこのように記されているようだ。(2)から派生したものに、3セットマッチでの6-0、6-0のスコアを意味する「ダブルベーグル」、同様に5セットマッチでの「トリプルベーグル」がある。

 日本では俗に6-0のスコアを「団子」と呼び、それが重なれば「串団子」あるいは「団子の串刺し」。うまいことを言ったものだが、国語辞書の語釈にはない。同じように粉から作るおやつでも、ベーグルが団子になると揶揄的な意味合いが強まり、その手の言葉遊びが許されなくなったご時世においては、このまま消えゆく運命か。

聖地決勝で起きた「大惨事」

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 さて、今年のウィンブルドン女子決勝は串団子、もとい、ダブルベーグルで決着した。ウィンブルドン初優勝を果たしたのは、前女王で今は世界ランク6位に落ち込んでいるイガ・シフィオンテク。哀れな対戦相手は、燃え尽き症候群を克服して初のグランドスラムの決勝に駆け上がってきた23歳のアマンダ・アニシモワだった。

 モスクワ出身の両親のもと、アメリカで生まれたアニシモワは17歳で臨んだ2019年の全仏ロランギャロスでベスト4入りしたホープだったが、その数カ月後にコーチでもあった父を病で突然失ったことで壁にぶつかり、メンタルヘルスの問題を抱えて21歳のときに一度はラケットを置いた。8カ月のツアー離脱を経て昨年復帰し、予選敗退に終わったウィンブルドンから1年後の華麗な復活劇だった。

 しかし、この決勝のためにアメリカから飛んできた母も見守った晴れ舞台はあまりにむごく、BBCの解説を務めていた辛口のジョン・マッケンローも「見るのが辛い大惨事」と同情したほどだった。センターコートの観客たちも多くは同じ心境だったに違いないが、210ポンド(約4万2000円)から270ポンド(約5万4000円)のチケットを手に入れた彼らにとっても、ちょっとした惨事である。

【次ページ】 世紀の珍事を起こした容赦なき女王

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