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ウィンブルドンテニス決勝で世紀の「0-6、0-6」敗戦に涙…グラフの全仏「こんなに早く終わって申しわけない」事件以来の「大惨事」はなぜ起きた?
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山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2025/07/21 17:02
ウィンブルドンでは114年ぶり、四大大会全体でも1988年全仏以来という決勝戦「ダブルベーグル」負けを喫したアニシモワ23歳はスピーチで涙をこらえきれない
世紀の珍事を起こした容赦なき女王
しかし、ウィンブルドンの初制覇に向かって全神経を集中させるシフィオンテクは、人々の顔色になど一瞥もくれず、最後の瞬間まで泥沼の挑戦者に一分の情けもかけずに走り抜けた。
オープン化以降のウィンブルドン決勝でダブルベーグルが記録されたのは、これが初めてだ。ウィンブルドンの歴史をさらに遡っても、1911年以来、実に114年ぶりの出来事だった。
ただ、グランドスラム全体ではオープン化以降たった一度、1988年の全仏オープンで起こっている。この年、グランドスラム全大会優勝にオリンピックの金メダルを加えた“ゴールデンスラム”を達成することになる女王シュテフィ・グラフが、今回のアニシモワのように初のグランドスラムの決勝に駒を進めてきたナターシャ・ズベレワをわずか32分で料理し、全仏2連覇を達成した。グラフはあと数日で19歳という若さだったが、前年にグランドスラム・デビューしたばかりのズベレワはさらに若い17歳。4回戦で元女王のマルチナ・ナブラチロワを倒して初めて脚光を浴びた、旧ソ連出身の新鋭だった。
32分、わずか13ポイントしか奪えず
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あの一戦が再び注目されることになり、記録を見返してみると、ズベレワが奪ったポイントは試合全体でたったの13ポイントしかない。32分という試合時間はオープン化以降グランドスラムの決勝史上最短だが、開始後9分から約1時間の降雨中断があり、試合よりも中断時間のほうがエキサイティングだったという皮肉な記述も見つけた。

