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ウィンブルドンテニス決勝で世紀の「0-6、0-6」敗戦に涙…グラフの全仏「こんなに早く終わって申しわけない」事件以来の「大惨事」はなぜ起きた?
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山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2025/07/21 17:02
ウィンブルドンでは114年ぶり、四大大会全体でも1988年全仏以来という決勝戦「ダブルベーグル」負けを喫したアニシモワ23歳はスピーチで涙をこらえきれない
コート上でのインタビューでグラフは「こんなに早く終わっちゃって観客の皆さんに申しわけない。6-0、6-0で勝つことなんて長い間なかったのに、今日は何もかもうまくいった」とスピーチしたが、それまでの1年間だけでもツアーで2度ダブルベーグルをつけている。グランドスラムに限ればキャリアを通して7回。オープン化以降ではクリス・エバートの13回に次ぐ記録だ。
さすがに男子の『トリプルベーグル』はグランドスラム全体でオープン化以降5回しかないが、女子のダブルベーグル自体は特別珍しいというわけではないのだ。ただ、そのほとんどは実力差が開いている早いラウンドでの話である。
大惨事はなぜ起きた?
2005年のインディアンウェルズの準決勝でリンゼイ・ダベンポートがマリア・シャラポワに、1981年のアメリアアイランド決勝でクリス・エバートがマルチナ・ナブラチロワにダブルベーグルをつけたように、グランドスラム・チャンピオン同士の戦いでも好不調の程度や環境などによって、ときとして完全に一方的な展開になることもあるが、トッププレーヤーたちが最優先で照準を合わせてくるグランドスラムではますますそういった例外は起きにくい。
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それが今回なぜこんな惨事になったのか。まず、誰でも最初は浮き足立ってしまうグランドスラムの決勝の経験がなかったアニシモワと、5度の優勝実績のあるシフィオンテクでは、12位と4位という現在地では表せない差があった。さらに、シフィオンテクは準決勝でも、ウィンブルドン初のベスト4に歓喜していたベリンダ・ベンチッチを6-2、6-0で一蹴。体力的余裕があり、勢いもあった。
一方のアニシモワは現女王アリーナ・サバレンカとの準決勝に2時間37分を要し、自身も「緊張はしていたけれど、異常なほどではなかった。むしろワクワクしていたくらい。どちらかというと、体力の問題だったと思う」とメンタルよりもフィジカルを惨敗の原因に挙げた。本来が容赦のない攻撃スタイルのシフィオンテクだが、今季タイトルが一つも獲れておらず、ウィンブルドンは過去ベスト8が最高という中で膨張したハングリー精神も、そのスタイルに拍車をかけたかもしれない。

