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オリンピックPRESSBACK NUMBER
日本選手権6連覇も「全然、胸を張れる記録ではない」…“反省の弁”に見る田中希実(25歳)の“際立ったスゴさ”「現状維持は後退になってしまう」
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph byYuki Suenaga
posted2025/07/15 17:01
1500mでは2位に5秒以上の差をつける圧勝劇。圧巻の6連覇だったが、レース後の本人は反省の弁が口を衝いた
打って変わって1500mの後は、田中は全く違う表情を見せた。
6連覇でも…反省ばかりだった1500m
2位に5秒以上の大差を付けて圧勝し、世界選手権の内定を勝ち取ったにもかかわらず、走り終えた田中に笑顔はなかった。
「シーズンベストは出たんですけど、ここは日本記録を狙うぐらいじゃないと……。何年か前の4分4秒と、今の水準での4分4秒とは全然価値が違う。全然胸を張れる記録ではない」
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「やっぱり6連覇したぐらいでは、皆さん『オー!』とはならなかったかと思います。大会記録や日本記録を作って、あっと言わせるような走りがしたかった」
「去年は、一緒に外国人選手が走ってくれたおかげで、4分1秒が出たんですけど、自分1人でも4分1秒以内で走れるようにならないと。自分自身のワクワク感が、今日はあまり感じられなかった」
優勝記録の4分4秒16に納得がいかなかったのだろう。勝者の言葉とは思えないほど、反省ばかりが口をついて出た。
田中自身が高慢な態度をとることはないが、現実的に実力を鑑みれば日本選手権は勝って当然の場だ。だからこそ、自身のレース内容を厳しく評価した。
今季はダイヤモンドリーグに加えて、アメリカ短距離界のレジェンド、マイケル・ジョンソンが主催するリーグ戦グランドスラム・トラックにも参戦。「毎月世界大会に出ていくような感じだった」と言い、高いレベルに身を置いてきた。
その視線は国内ではなく、常に世界に向いている。その意識の高さこそが、国内で勝ち続けられる所以なのだろう。
7月19日にはダイヤモンドリーグ第11戦ロンドン大会にエントリー。日本選手権を終えて、再び世界の戦いに戻った。現状維持ではなく進化を求め、世界に揉まれ続ける田中。9月の東京、国立競技場ではどんな活躍を見せてくれるだろうか。

