甲子園の風BACK NUMBER

「次は完全試合を…」超ビッグマウスも話題に…甲子園4連投で準優勝→4球団競合でプロへ　あの「伝説の左腕」を覚醒させた“後の沢村賞投手”の正体

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沢井史Fumi Sawai

photograph byJIJI PRESS

posted2025/07/15 11:02

1997年夏の甲子園で準優勝した京都・平安高校のエースだった川口知哉。ビッグマウスも話題になったが、その躍進のウラにはのちの沢村賞投手との出会いがあった

　1995年、1年生の夏の京都大会。初戦で対戦した南京都（現・京都廣学館）には、当時ドラフト候補だったエース右腕・斉藤和巳（元ソフトバンク）がいた。1年生ながら先発マウンドを任された川口は、その斉藤と投げ合うことになった。

　だが、すべてにおいて斉藤に圧倒されたという。

「まず、和巳さんって手が凄く長くて、当時から身体が大きかったです。身長が190センチ近くあったと思います。それでいて投げ方はスリークォーター。ストレートの軌道がヘビみたいにくねって曲がるんですよ。打席から見ると、シュートしながら、何かこう唸っているというか……。

　僕は左バッターですけど、手から（ボールが）離れた瞬間は左方向に向かってくるように見えるんですよ。でも、手元まで来ると微妙にボールが逃げていくんです。それでスピードが142キロとか出ていたので、1年生の自分からしたら“これは打てないな”って」

　スタンドには20人以上のプロのスカウトが陣取っていた。

　試合は川口が3ランを浴びるなど本領を発揮できず、2－5で敗れた。ドラフト候補を相手に早い夏の終わりとなったが、大変だったのは試合後だった。

　平安が完敗したことに腹を立てた平安のオールドファンが、原田英彦監督（当時）へ怒号を発しながら球場入口に集まり、球場外は一触即発状態となっていたのだ。

「あの試合は、平安という伝統の重さを知りました」と川口は言う。

　熱くなったファンと原田監督が言い争う場面もあったが、事態は何とか収束。それだけ平安は常に注目を浴び続けている存在であることを痛感した。

　ただ、川口の脳裏に焼きついたのは、やはり斉藤和巳という大投手の一挙手一投足だった。

「いやー、凄かったですね。ドラフト1位候補のボールはこんなにも凄いのかって。あんなボールは見たことがなかったので、1年生ながら圧倒されっぱなしでした」

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