「次は完全試合を…」超ビッグマウスも話題に…甲子園4連投で準優勝→4球団競合でプロへ　あの「伝説の左腕」を覚醒させた“後の沢村賞投手”の正体 

　相対する智弁和歌山もアルプススタンドは全校応援の生徒で埋め尽くされていたが、当時のブラスバンドではジョックロックはまだ奏でられておらず、アフリカン・シンフォニーは今でもはっきりと耳に焼きついているという。

「智弁和歌山の打線はしぶとかったですね。キャプテンの中谷（仁、現・智弁和歌山監督）や喜多（隆志、慶大→ロッテ　現・興国監督）もいましたけれど、嫌なバッターが多かったです。それでも日本一になれなかったことに関して後悔はありません。やるべきことをやって力も出し切れたので、甲子園では最後に負けてもむしろ清々しかったです」

視界に入った「かつてのドラ1候補」の背中

　最後の夏の甲子園で自己最速となる143キロを出したこともひとつの要因だったかもしれない。ひとつの痕跡を残し、高校野球を終えた。そしてずっと追いかけてきたあの投手の背中が、ぼんやりと見えたような気もした。

ADVERTISEMENT

「これで和巳さんに追いついたのかな？　とは思いました。僕が勝手に和巳さんをライバル視して勝手に比べていたんですけど、実際はどうなのか……これは自分がどうこう言うことではないですよね」

　その後、11月に行われたドラフト会議でオリックスに1位指名された。

　高校ナンバーワン左腕と評され、記者会見の壇上で大勢の報道陣に囲まれ、斉藤和巳投手も浴びたスポットライトに自分も照らされた。しかも、4球団競合というおまけつきで、名実ともにその年のNo.1有望株となった。

「ここまで頑張って来られたのも和巳さんのお陰。和巳さんという大きな目標がいたから高い意識の中でやって来られました」

　後に沢村賞にも輝いた斉藤和巳に追いつけたかどうかは28年経った今も「分からない」と川口は言う。ただ、その後の自分に思いもよらないプロ野球生活が待っていることは、知る由もなかった。

＜次回へつづく＞

#2に続く

「甲子園で準優勝→4球団競合ドラ1」の“天才サウスポー”はなぜプロで1勝もできなかった？ 「何でも鵜呑みにしてしまって…」本人が語った7年間の苦悩

#3

4球団競合ドラ1でも…「プロ7年間でまさかの0勝」あの“消えた天才サウスポー”が高校野球“名門校”の監督になったワケ「恩師に恩返しを…」

#2

「甲子園で準優勝→4球団競合ドラ1」の“天才サウスポー”はなぜプロで1勝もできなかった？ 「何でも鵜呑みにしてしまって…」本人が語った7年間の苦悩

#1

「次は完全試合を…」超ビッグマウスも話題に…甲子園4連投で準優勝→4球団競合でプロへ　あの「伝説の左腕」を覚醒させた“後の沢村賞投手”の正体