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陸上日本選手権で「異例の8人車座」ウラ話…“史上最激戦”の女子100mハードル なぜライバルたちが一団に?「何が何でも一緒に走りたかった」
posted2025/07/09 11:03

陸上日本選手権の大トリを担った100mハードル決勝のレース後、8人で車座になって結果の確定を待つ選手たち。普段はなかなか見ない光景だが、その経緯は?
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Nanae Suzuki
選手ばかりでなく、国立競技場を訪れた観客も含め、その場を共有した多くの人にとって、今年の日本選手権の最終種目となった女子100mハードル決勝は特別なレースになったに違いない。
レースは4レーンを走った田中佑美(富士通)と7レーンの中島ひとみ(長谷川体育施設)がほぼ同時にフィニッシュ。軍配は田中に上がったが、結果が確定するまでには3分もの時間を要した。
レース後に起こった「二転三転」
場が騒然としたのは、その間、競技場の電光掲示板に確定前の順位が何度か誤って表示されたからだ。
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1位田中と表示された直後に1位中島、2位田中に訂正。再び表示が消えると、今度は明らかに遅れていた寺田明日香(ジャパンクリエイト)が3位と表示されるなど、結果が二転三転し、現場は混乱した。
一方でそんな混乱をよそに、全日程を終えたトラックでは結果確定を待つまでの間なんとも不思議な光景があった。
もちろんまだ緊張感から解放されたわけではなかったが、第1曲走路のあたりに100mハードル決勝を走り終えた8人の選手たちが車座になって談笑を始めたのだ。
その中心にいたのが寺田だ。
「それぞれ順位やタイムがあるので、こう寄ってきてくれるのは『いいよ、いいよ』って逆に恐縮しちゃうぐらいなんですけど……。それぐらいの存在だと思ってくれるのは本当にうれしいです」
ことの発端は今シーズン限りで競技を退くことを表明している寺田のもとに、選手が1人また1人と駆け寄ってきたこと。こうして自然と輪が大きくなっていった。