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陸上日本選手権で「異例の8人車座」ウラ話…“史上最激戦”の女子100mハードル なぜライバルたちが一団に?「何が何でも一緒に走りたかった」
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2025/07/09 11:03

陸上日本選手権の大トリを担った100mハードル決勝のレース後、8人で車座になって結果の確定を待つ選手たち。普段はなかなか見ない光景だが、その経緯は?
フィニッシュ後の記念撮影も、センターはもちろん寺田だった。
「まず(福部)真子ちゃんが来てくれて、佑美ちゃんも来てくれて、『1回、順位を気にせい!』って言ったんですけどね(笑)。でも、これがヒャクハー(100mハードル)の良いところですね。今日は技術的なことはあまり話していないですけど、昨日も終わった後にみんなで着替えながら、ああいう感じで技術的なことを話したりしていました。こんなことができる競技ってなかなかないと思うんですよ。これからもそういうふうになってくれたらいいなって思います」
レースを終え、暑さのあまり体調不良だったにもかかわらず、寺田はミックスゾーンでそう話していた。
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確かに寺田の言う通りだ。
それぞれの種目で健闘を称え合う場面はよくあるが、同じレースを走った全員がその場に座って話し込むのは、混成競技を除けばあまり見たことがない。そもそも個人競技である陸上競技の特性上、どうしても決勝レースにはピリピリとした緊張感が付きまとう。それが結果の確定前ならばなおさらだろう。
ただ、言うまでもなくその和やかな雰囲気を作り出したのは、寺田自身だった。
「明日香さんが場を明るくしてくれた」
「明日香さんは、ラグビー(※)から帰ってこられてから、ハードルを引っ張ってきてくださり、明日香さんが場を明るくしてくれた。今回、予選・準決勝で落ちた選手もそれぞれ思いは一緒で、そういった子たちとも心を通わす機会が増えたのはすごくうれしいと思います」
(※寺田は一度陸上競技から離れ、結婚・出産を経て2016年から7人制ラグビーに転向。その後、2019年に陸上に復帰した)
優勝した田中がこう話していたように、寺田を介して選手間の交流が活発になったのは間違いない。しかもそれが決して馴れ合いではなく、切磋琢磨し合って競技力を磨いてきた。