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「ぜひ皆さんやって頂きたい(笑)」陸上800mで“衝撃の日本新記録”…17歳・久保凛がレース後に見せた「テレビには映らない」“本当の強さ”の正体
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2025/07/06 17:02
日本選手権の女子800mで自身2度目の2分切りとなる日本新記録をマークして連覇を達成した17歳の久保凛。国内では敵なしだが、その強さの秘密は…?
高校生がこれほどの急成長を遂げると、往々にして一度はスランプに陥りがちなものだ。
そこから再び浮上できないまま、競技生活を終えた者も過去にはいる。取り巻く環境や競う相手も急に変わるのだから、当然といえば当然のことだろう。
だが久保の場合、一段高いステージに上がってもしっかりと自身の力を発揮できている。競り合う相手がいなくても、自分でレースを作って好記録をマークできるのも特筆すべき点だ。「練習は去年とはそんなに変わっていない」と言い、2分を切るのは1年ぶりだったが、明らかにアベレージは昨シーズンよりも上がっている。
日本王者として臨む今シーズン…重圧も
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日本選手権のディフェンディングチャンピオンとして迎える今季は、無心で駆け抜けた昨シーズンとはもちろん心境が異なる。
「去年がすごく活躍できたシーズンだったので、今年に入る時に、“今シーズンいけるかな”っていう不安な気持ちはありました」
こんな心のうちを明かす。国内無敵の久保といえど、決してプレッシャーと無縁というわけではなかったのだ。
それでも、高校ラストイヤーとなり、一戦一戦を楽しむことを心掛けてきた。今回の日本選手権も、応援に来てくれた家族から「楽しんで走ってきな」という声を掛けられ「すごくリラックスして走れた」と言う。
「気持ちがいっぱいいっぱいになっちゃうと、走れないっていうのが最近分かってきているので、もう何も考えずに行こうとは思っていました」
こうも話すように、自分の気持ちをコントロールできることも、安定したパフォーマンスを発揮できる要因なのだろう。久保の話を聞いていると、切り替えが早く、負の感情を引きずらない印象がある。

