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「甲斐拓也はタッチしていたのか?」よりも…岡田彰布も苦言「リプレイ検証に異議→即退場ルール」は妥当か? 巨人・阿部慎之助監督の“退場”に違和感
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岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/06 11:04

リプレイ検証の判定をめぐって退場宣告された巨人・阿部慎之助監督
2000年5月6日の横浜戦(ナゴヤドーム)では、同点の7回2死二塁のチャンスで、立浪和義が見逃し三振に。この判定を巡って、立浪は橘高淳球審を両手で突いて退場に。ベンチから飛び出て体当たりした星野監督、大西崇之も退場処分を受けた。暴行によって、橘高球審は右肋骨を骨折。井野修セ・リーグ審判副部長は憤りを隠さなかった。
〈数年前にディミュロ事件があって審判に対する暴力行為は絶対にしてはいけないとすべての球団と約束した。同じことを同じ球団で繰り返している。1人のアンパイアのところに何人いったのか分からないが、こんなことが許されていいのか。グラウンドに立つのが恐ろしいというところに来ている〉(00年5月7日付/スポーツニッポン)
事件の6日後、プロ野球ファン2人が、傷害などの容疑で星野監督ら3人を告発。橘高審判に処罰を求める意思がないため、起訴猶予となったが、社会問題にまで発展した。
審判への暴力が消えた今…変えるべきものは?
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審判は長年、乱闘や暴力において「チームの士気を上げる」「エンタメの一つ」という2つの価値観の犠牲者となってきた。権限を強化しなければ、命の危険さえ感じる状態に追い込まれていた。その延長線上に、「リプレイ検証に異議を唱えたら退場」という文言ができたのだろう。歴史を振り返れば、この規約は審判の身を守るために必要だったのだ。
阿部監督は「(抗議中に)熱くなってしまった」と認めているが、激昂していたようには見えない。帽子を叩きつけるなどのパフォーマンスもなく、チームの士気を上げるために審判を利用しようという意図は感じられなかった。ましてや、暴力も振るっていない。
どんな物事も、主張をしたら理由を明示しなければ、相手の理解は得られない。それなのに、「根拠を聞いたら退場」では監督の立つ瀬がない。
冷静な態度を取った阿部監督のおかげで、「リプレイ検証に異議を唱えたら退場」というルールの不自然さをクローズアップしやすくなった。
これを機に、「リプレイ検証が覆った場合、監督に求められれば、審判は根拠を説明しなければならない」というような文言をアグリーメントに加えるべきだろう。その前提に、監督や選手が審判に暴力を振るわないという大原則があることも忘れてはならない。

