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「甲斐拓也はタッチしていたのか?」よりも…岡田彰布も苦言「リプレイ検証に異議→即退場ルール」は妥当か? 巨人・阿部慎之助監督の“退場”に違和感
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岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/06 11:04

リプレイ検証の判定をめぐって退場宣告された巨人・阿部慎之助監督
〈カワさん(川上監督)もベテランだし、チームのムードが悪いときは何か刺激になるようなことを考えるだろう。大声でなんやかやはよくいうけど人に手を出すというのは……。かなりチーム状態が悪いんだね〉(中日・与那嶺要監督 74年7月10日付/日刊スポーツ)
〈川上監督の退場はおそらくチームにカツを入れるためのゼスチュアと思うが、他にだれもやる首脳陣がいないから、ついに手を出したのではないか〉(ヤクルト・荒川博監督/前掲紙)
川上監督が意図的だったかどうかは別として、チームへの刺激策として監督が審判に抗議し、暴力を振るうという風潮は存在していた。その考え方は球界内で共有され、審判の立場から考える者はいなかった。なぜ、暴力は半ば容認されたのか。
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昭和の大女優の言葉にヒントが隠されている。川上退場について、高峰三枝子は素直な感想を述べた。
〈何か非常な興奮が走るのを覚えたわ。あの冷静で売る川上さんが取り乱した。プロ野球というのは、善悪はともかく、あんな形でエキサイトしても面白いものね〉(74年7月10日付/日刊スポーツ)
暴力は悪いとわかっていても、他人の喧嘩や揉め事には興味を掻き立てられる。それは、SNS時代の現代まで通じる「人間の隠せない本能」なのだ。
乱闘=エンタメ…審判は被害者だった
中日の星野仙一監督は、このファン心理を存分に活用しつつ、選手を鼓舞した。2期11年に渡る星野政権で、中日はのべ15人の退場者を出している(途中でルール変更のあった94年以降の危険球退場除く)。喜ばしいことではないが、闘将の怒りはファンから待ち望まれ、人気番組『珍プレー好プレー』でも大きく取り上げられた。
大乱闘は星野中日の名物だった。90年5月24日の中日対巨人戦(ナゴヤ)、3回裏2死三塁で、巨人・槙原寛己の投球が中日・バンスローの顔面付近を襲う。星野監督は友寄正人球審に「危険球だ」と抗議。巨人の松原誠打撃コーチが「いつまでグズグズ言ってるんだ!」と野次ると、星野監督が「なんや! 出てこい!」と応戦。中日ベンチからは一斉に選手が駆け寄り、乱闘に発展した。
この状況で、中継局のフジテレビがCMを入れると、ファンから抗議が殺到したという。