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藤井聡太vs永瀬拓矢「千日手」は再び起こるのか…じつは羽生善治vs谷川浩司の“七冠阻止”大一番でも発生、「将棋のガン」と評した棋士とは 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2025/07/05 06:00

藤井聡太vs永瀬拓矢「千日手」は再び起こるのか…じつは羽生善治vs谷川浩司の“七冠阻止”大一番でも発生、「将棋のガン」と評した棋士とは<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

名人戦第5局、千日手成立時の両対局者

「1日目の17時過ぎに千日手になり、封じ手時刻の18時30分までの80分で体を休められました。それが大きかったです。藤井さんとの2日制対局は、それくらい消耗するんです」

藤井が語った「千日手観」とは

〈第5局〉
 永瀬の先手番となった。指し直し局の手番にかかわらず、第1局の「振り駒」で決まった手番が優先される。1日目は駒組み手順が続いて千日手が懸念され、2日目の10時59分に千日手が成立した。永瀬は「打開したかったのですが、互角の形を発見できませんでした」と語った。

 千日手指し直し局は30分後に再開。第2局と同じような展開となり、再度の千日手が懸念された。藤井が打開すると、結果的に苦しくなった。その後、藤井の攻めに対して永瀬に受けのミスが出て形勢はもつれた。そして171手の激闘の末に藤井が勝ち、名人位を防衛した。藤井は局後に「倒れないように耐えて指したことが好転につながりました」と語った。

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 藤井七冠はあるインタビューで千日手についてこのように語っている。

「現代の角換わり将棋では後手が待機する指し方が有力で、先手の作戦をかわすことに成功しています。戦術として千日手を受け入れる状況になっています。打開と指し直しの比較は難しいです」

 一方の永瀬九段は千日手局が多いことで知られていて、この数年間で約15局ある。それは棋理の追求、対局が続いてもタフな心身、相手(特に藤井)の持ち時間を減らす勝負術など、いろいろな考えがあるようだ。

“羽生七冠誕生なるか”の一局でも千日手が

 名人戦で千日手が2局あったのは1982年以来で、中原誠名人(当時34)に加藤一二三・九段(同42)が挑戦した第40期名人戦だった。2勝2敗で迎えた第6局(第1局は持将棋)、3勝3敗で迎えた第8局で、ともに負けられない状況において中盤で千日手になった。そして後日の指し直し第8局で、加藤九段が勝って新名人に就いた。

「羽生七冠」誕生なるか、の大勝負でも千日手が起きている。

 1995年3月下旬に行われた第44期王将戦第7局、谷川浩司王将(当時32)と羽生善治六冠(同24)がともに3勝3敗で対戦した。羽生が勝てば「七冠制覇」の偉業が達成される。対局場は青森県の十和田湖の近くのホテルで、極寒の地に200人の将棋ファンが集まり、報道陣も150人を数えた。

 その注目の対局で、2日目の15時頃に中盤で千日手になったのだ。

【次ページ】 “伝説の棋士”による一局で規定変更

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