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藤井聡太vs永瀬拓矢「千日手」は再び起こるのか…じつは羽生善治vs谷川浩司の“七冠阻止”大一番でも発生、「将棋のガン」と評した棋士とは
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2025/07/05 06:00
名人戦第5局、千日手成立時の両対局者
米長は谷川戦の後、自戦記で《この将棋は現行ルールに対して、問題を提起した一局といえる》と書いた。やがて千日手規定を見直す声が高まり、ある棋士が従来の規定に併せて、「同一局面4回で千日手」という改正案を提起した。これならば問題はすっきり解決する。83年5月の将棋連盟総会に上程され、承認によって現代に至っている。
昔の公式戦では、千日手局は翌日に指し直しされた。ただ不適切な理由で千日手にする棋士がいたり、翌日の記録係の手配が大変だったことから、現行の即日に指し直しとなった。
「尺進あって寸退なし」
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この棋風を全うした原田泰夫九段は現役時代に「千日手は将棋のガンだ」と訴えた。自身の対局でも不利を承知で千日手を打開したことも多く、昔はそうした棋士は多かった。私こと田丸も同様で、45年間の現役時代に千日手局は3局ほどだった。
藤井-永瀬の王位戦でも千日手は現れるか
しかし現代では、千日手をひとつの戦略として考えている棋士が意外と多い。相手に無理攻めを誘う目的や、後手番から先手番に入れ替わるために、序盤で千日手に誘導するような作戦を採るのだ。ちなみに、近年の公式戦の対局での千日手の比率は2%ほど。以前より少し増加傾向にある。
藤井王位に永瀬九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負は、第1局が愛知県小牧市で7月5日に開幕する。
両者が対戦する今年のタイトル戦は、王将戦、名人戦に次いで3回目。名人戦のように、千日手が勝負の流れにどう影響するのか注目したい。

