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〈電撃トレード物語〉リチャード⇔秋広優人+大江竜聖はホントに「大型」か…明暗クッキリ「世紀の大トレード」、巨人・張本勲は?
posted2025/06/30 17:05
リチャードと秋広優人。今年起きた電撃トレードだが、球史に残る大型トレード史を紐解くと…?
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki/JIJI PRESS
デバース電撃移籍に見る“日米トレード感覚”の違い
5月12日にソフトバンクのリチャードと巨人の秋広優人、大江竜聖のトレードが決まった。リチャード、秋広はともに将来の主軸候補と思われていただけに、メディアは「電撃トレード」「大型トレード」と書き立てたが、2人とも規定打席に達したことのない「レギュラー未満」の選手である。
MLBであれば、これくらいのトレードは日常茶飯事だ。6月15日にはレッドソックスの中軸内野手のラファエル・デバースと、ジャイアンツの右腕投手ジョーダン・ヒックスら4選手の大型トレードがあった。MLBでは7月末のトレード期限までに、デバースと同じクラスの大物トレードが、あと数件はあるとみられる。
NPBで大きなトレードが少ないのは「移籍はあまり良いことではない」との意識が続いてきたからだろう。日本社会では永年、学校を出て入社した会社で定年まで勤めあげる「終身雇用」が当たり前とされてきた。プロ野球はサラリーマンではなく「個人事業主」だが、それでも「育ててもらった球団に骨を埋める」のを良しとする考え方が支配的だったからだ。
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日本球界で最初のトレードは、プロ野球元年の1936年、巨人の主将だった二出川延明と内野手の江口行男が金鯱軍に移籍したケースだとされる。二出川は金鯱軍で選手兼任監督となった(出場試合はなし)。以後も移籍はいくつもあったが、球団同士が純粋に「戦力補強」を目的とした「トレード」をした例は、あまりなかった。その数少ないケースを、移籍前後の成績とともに見ていこう。
「世紀の大トレード」山内一弘⇔小山正明
【山内一弘と小山正明「世紀の大トレード」1963年オフ】
「世紀の大トレード」と喧伝されたのが、1963年オフ、大毎オリオンズ山内一弘と阪神タイガース小山正明の1対1交換トレードだった。
山内、小山ともに、リーグを代表するスター選手だった。この時点での両選手の成績を見ていこう。

