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巨人電撃トレード張本勲⇔“放出要員2人”も江夏豊⇔江本孟紀も移籍成功だった一方で…江川卓⇔小林繁「空白の一日」は不幸な人間ドラマ

posted2025/06/30 17:08

 
巨人電撃トレード張本勲⇔“放出要員2人”も江夏豊⇔江本孟紀も移籍成功だった一方で…江川卓⇔小林繁「空白の一日」は不幸な人間ドラマ<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

張本勲と江夏豊。球史に残る大打者と大投手もトレード経験者である

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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プロ野球史に残る大型トレード。それを契機に力を発揮した選手、トレード収支的に“得した球団”はどちらか? 移籍前後の成績を徹底比較する。〈NumberWeb特集:電撃トレード伝説/全3回。第3回につづく〉

 今季のリチャードと秋広優人、大江竜聖の1対2トレードをはじめ、巨人絡みのトレード劇は多い。その中で球史に残る「成功例」となったのは、1975年オフのことである。

最下位長嶋巨人のテコ入れは“日本ハム構想外”張本

【張本勲、巨人へ 1975年オフ】

 1974年「巨人軍は永久に不滅です」の言葉を残して引退した長嶋茂雄は巨人監督に就任したが、自身が抜けた打線の穴は大きく75年は巨人史上初の最下位に転落。翌年、打線の補強に動いた。

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 一方、パ・リーグで安打製造機の名をほしいままにしていた張本勲だが、親会社が東映→日拓→日本ハムと変わる中で大杉勝男、白仁天、大下剛史などと共にチーム構想から外れつつあった。

 筆者は75年、日生球場の近鉄―日本ハム戦で張本を観たが、近鉄側の観客席からは「張本~、お前は悩みを持っている。野球どころではないはずだ」とヤジが飛んでいた。すでにスポーツ紙では「張本の移籍先は巨人か?」という見出しが躍っていた。

 果たしてこのオフに高橋一三、富田勝とのトレードで、張本は巨人に移籍した。

〈3人の移籍前までの成績〉
張本勲 外野手 35歳 17年

2136試7560打2435安
414本1341点304盗 率.322
首位打者1回、MVP1回、ベストナイン14回
高橋一三 投手 29歳 11年
383登110勝78敗0S
1766.2回1364振 率2.87
最多勝1回、最多奪三振1回、沢村賞2回、ベストナイン2回
富田勝 内野手 29歳 7年(南海、巨人通算)
668試1832打471安
57本211点62盗 率.257

張本はもちろん高橋一三ら“放出要員2人”も活躍した

 この時点でNPB通算安打1位は、野村克也の2601本。2位の張本はこれを激しく追い上げていた。通算打率.322は史上1位だった。

 左腕・高橋一三は、堀内恒夫とともにV9巨人のWエースとして活躍。富田は大学時代、田淵幸一(阪神→西武)、山本浩二(広島)とともに「法政三羽烏」と言われたスター選手。南海にドラフト1位で入団。正三塁手となるが73年、トレードで巨人に。「ポスト長嶋」と目された時期もあった。

【次ページ】 張本だけでなく高橋一三ら“放出要員2人”も活躍した

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