田中正義にいったい何があった？ 新天地・日本ハムで激変…窮地で思い出す新庄剛志監督の言葉「全部真っすぐで、ホームラン打たれてこい！」 

　普段は9回が持ち場の守護神・田中をこの局面で投入したのだ。

　落ち着いたマウンドさばきでソトを空振り三振。6回も危なげない投球で三者凡退に仕留めた。打線が得点できないまま試合が進み、新庄は7回も田中を続投させた。そして、先頭の友杉篤輝を三ゴロに抑えたところでようやくマウンドを降りた。

　ベンチに戻ってくると、新庄から声をかけられた。

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「もうちょっと、いけた？」

　田中は必死だった。

「いや、ちょっとわからないです」

　そう答えるのが精いっぱいだった。

　1回2/3を2奪三振無失点。ヒットを1本も許さなかった。

　田中の力投がマリーンズ打線の勢いを完全に止めたのは確かだった。

　シーズン中、田中は一度もイニングまたぎがなかった。だが、この大一番では3イニングにわたって快投してみせた。リリーフエースを早々に投入し、しかも続投させるという新庄の大胆な勝負手がクローズアップされたが、当の本人はいたって冷静だ。

「とにかく目の前のひとりをどう抑えるかに集中していました。自分がいま、イニングをまたいでいるとか、またいでいないとかは正直、気にしていませんでした。ポストシーズンなので、またぐとか言っている次元の話ではありません。勝つために一番いい選択をする試合でしたから。でも、ああいう試合を任せてもらえてありがたかったですね」

クローザーの抱負「正義でやられたらしょうがない」

　ファイターズはCSのファイナルステージに歩を進めたが、ホークスに敗れて日本シリーズ進出はならなかった。だが、チームは一丸となって戦い、マリーンズを相手に、やるか、やられるかの大勝負を制したのだ。そして、その中心には修羅場で仁王立ちする田中の姿があった。

　昨秋、新庄は大盛況のファンフェスで25年のクローザー候補として齋藤友貴哉の名前を挙げた。その直後、田中の名前を添えることも忘れなかった。それは大黒柱に対する指揮官の敬意だった。

　クローザーとしての抱負を訊くと、田中は重みのある言葉を並べた。

「チームを背負うことになるので、抑えとしての器に値する人間になっていかないといけません。正義でやられたらしょうがないと思ってもらえるような、普段の姿でいなきゃいけないと思っています」

　3年やって一人前。球界の格言のひとつである。

　愛称のジャスティスもすっかり定着し、今年は“プロ3年目”である。オールスターのファン投票では抑え投手部門で選出され、3年連続の球宴出場が決まった。そして、秋には大勝負が待っている。遅咲きの剛腕は頂点に立つため、ひたすら快速球を投げ込んでいく。

＜前編から続く＞

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「笑って投げなさい」日本ハム・田中正義が新庄剛志監督に言われた“驚きのフレーズ”「このチャンスを逃したら、野球人生が終わる」