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「笑って投げなさい」日本ハム・田中正義が新庄剛志監督に言われた“驚きのフレーズ”「このチャンスを逃したら、野球人生が終わる」

posted2025/07/01 17:00

 
「笑って投げなさい」日本ハム・田中正義が新庄剛志監督に言われた“驚きのフレーズ”「このチャンスを逃したら、野球人生が終わる」<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

新庄剛志監督から「笑って投げなさい」と言われ、笑顔を意識するようになったという日本ハムの田中正義投手

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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SANKEI SHIMBUN

 今年のオールスターゲームのファン投票で抑え投手部門1位。戦力外の危機から球界を代表するクローザーへと、田中正義は北海道日本ハムファイターズへの移籍で自分の立場を大きく変えた。田中の背中を押したのは移籍1年目のキャンプで新庄剛志監督にかけられた、ある「言葉」だった。ひとりの選手の人生を変えた監督の「言葉力」とはーー。<全2回の前編/後編へ>

新庄監督の信頼の高さが表れた初マウンド

 かつて戦力外の危機にさらされていた男が、いまや球界を代表するクローザーに成長した。北海道日本ハムファイターズにおけるさまざまなサクセスストーリーのなかでも、この男ほど劇的に人生が変わった例はないだろう。福岡ソフトバンクホークスから移籍して3年目。田中正義の剛腕ぶりは2025年も健在だ。

 新庄剛志監督の信頼の高さが表れたのは今季の初マウンドである。

 3月29日、埼玉西武ライオンズとの開幕2戦目は2−2のまま延長戦に入っていた。

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 10回表に勝ち越し、その裏の守りを迎えると、わずか1点のリードを死守すべく、新庄は田中をマウンドに送り出した。

 圧巻の投球だった。

 先頭の2番、西川愛也を外角への151kmで見逃し三振に抑えると、タイラー・ネビンを内角高めの151km速球で二飛に片づける。一発のある代打レアンドロ・セデーニョには胸元に重量感のあるストレートを3球、立てつづけに投げ、最後は球威で押して三飛に詰まらせた。ライオンズの上位打線を寄せつけず、守護神の面目躍如だった。

 その前日の開幕戦は金村尚真が完封勝利を挙げており、小気味よく開幕ダッシュを決めたことで、スローガンで謳う「大航海」はその出航から順風満帆になった。とりわけ、守護神・田中の安定感はそのままチームに安心感をもたらしていた。大きな時化はなく、パ・リーグの首位を快走したまま、交流戦を迎えることになった。

 千葉ロッテマリーンズにサヨナラ勝ちした6月1日の試合後、新庄はリーグ戦が一区切りとなり、これから交流戦に向かう戦いの節目での総括を求められると星勘定や先発陣について語ったあと、リリーフについて触れながら、こう言った。

《最近では田中正義君が笑みが多くなったなというところはプラス材料にはなってます》(日刊スポーツ、25年6月1日)

 田中がチームの重責を担う立場になってから2年が経ち、すっかり風格が漂う。

 47試合に登板した23年は自己最多の25セーブを挙げ、昨年は53試合に投げて20セーブをマークした。防御率はこの2年で3.50から2.17に改善され、成長の跡を示す。

転機となった23年のシーズン

 だが、今季、プロ9年目を迎えた剛腕に気の緩みは見られない。

「僕にとって今年がプロ3年目みたいな感覚です。ソフトバンク時代は大事なシチュエーションで投げたことがありませんでした。だから、(移籍した)23年がプロ1年目という感じなんです」

 山あり谷ありの歩みだったが、いま、遅咲きとはいえ、大輪の花を咲かせている。

【次ページ】 新庄からかけられた驚きのフレーズ

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