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16歳の高校生プロレスラー、“流血デビュー戦”の舞台裏…「バックステージでギュッと手を握り…」心希が母・大向美智子と歩んだ二人三脚 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2025/05/31 17:18

16歳の高校生プロレスラー、“流血デビュー戦”の舞台裏…「バックステージでギュッと手を握り…」心希が母・大向美智子と歩んだ二人三脚<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

5月24日にデビュー戦を行ったマリーゴールドの高校生レスラー・心希

見届けた母の思い「さらけ出してましたね。だから100点」

 試合を見届けた母の採点は「100点!」だった。母として、プロレスの先輩として、何よりコーチとして見て「想像していたよりできた」と言う。

「ゼロから私と練習してきて、ここまでやってくれるとは思わなかったですね」

 課題は闘いの中で感情を見せることだった。

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「性格的なものなのか、声が小さいんですよ。もともと感情を出さないタイプで。試合中に無感情に見えてしまうので、もっと(気持ちを)さらけ出せと言ってきました。でも今日、試合になったらめっちゃさらけ出してましたね。だから100点です。学校でも取ったことないけど(笑)」

 デビューしたのだから、これからは自分で考えて自分がなりたいレスラーになってほしいと母は言った。娘にどんなレスラーになりたいか聞くと、こう答えてくれた。

「ファンの人たちに応援してもらえる、強くてカッコいいレスラーになりたいです。ママとか麻衣さんみたいな」

 初めての試合、一生に一度のデビュー戦も「思ったより緊張しなかったです。リングに立って思ったのは、私は今からプロレスラーなんだって」。

バックステージで、ギュッと手を握った16歳の姿

 母親が思っていた以上に本番に強いタイプ、プロレスラー向きの性格なのかもしれない。とはいえまだデビューしたばかり、試合の中で課題はどんどん出てくるだろう。必死で勇敢で無我夢中な闘いぶりと、バックステージで母と顔を合わせた途端にギュッと手を握った姿。そのギャップの間に“16歳のプロレスラー心希”がいる。

 学校があるから、今後もしばらくはフルタイム参戦とはいかないようだ。キャリアの近い選手たちと成長スピードが違い、歯痒い思いをするかもしれない。母と同じ道を選ぶことには勇気が必要だったはずだし、2世レスラーというだけで批判してくる者もいるだろう。

 ただプラスもマイナスも、そのすべてが他の選手では味わえないものだ。デビュー戦を見て感じたのは、大器ぶりとともに応援したくなる雰囲気を持っているということ。女子プロレス界に魅力的な新人がまた1人増えたのは間違いない。心希が“大向美智子の娘”なのではなく、大向が“心希の母親”と呼ばれるようになる日も遠くないのではないか。

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