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16歳の高校生プロレスラー、“流血デビュー戦”の舞台裏…「バックステージでギュッと手を握り…」心希が母・大向美智子と歩んだ二人三脚 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2025/05/31 17:18

16歳の高校生プロレスラー、“流血デビュー戦”の舞台裏…「バックステージでギュッと手を握り…」心希が母・大向美智子と歩んだ二人三脚<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

5月24日にデビュー戦を行ったマリーゴールドの高校生レスラー・心希

 指導で力を入れたのは「とにかく受身」だと大向。

「受身は新人のうちにやっておかないと。プロレス人生、長くできるかできないかには受身が重要なので。全女(全日本女子プロレス)出身の選手のキャリアが長いのは受身がしっかりしてるからですよ。(高橋)奈七永もそうだし」

 純白のコスチュームも母がプロデュースしたものだった。モチーフはもう一つの夢だったアイドル。憧れの存在であるハリウッドJURINA(松井珠理奈がドラマで演じたプロレスラー)のイメージも入っているそうだ。JURINAからは会場にフラワースタンドが届いていた。

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 普通の新人レスラー(練習生)なら、入団した時点で育成は団体の仕事になる。けれど大向と心希の場合は事情が違って、まさに二人三脚だった。だからこそ、母がデビュー戦を解説席で見守る必然性もあった。

鼻血を出しながら粘る姿に“七光”はなかった

 対戦したのはユナイテッド・ナショナル王者の桜井麻衣。ビッグマッチだからタイトル防衛戦を行うのが一般的なマッチメイクだが、今回は第1試合で新人のデビュー戦の相手を買って出た。それも「タイトルマッチをするくらいの気持ち」だったと桜井。話題の2世レスラー、おそらくプレッシャーだらけの初ファイトを受け止めるのも、トップ選手の大事な仕事なのだ。

 もちろん、心希が攻め込まれる場面が多かった。実力差からして当然そうなる。そこでどう踏ん張るかが新人の見せ場でもある。鼻血を出しながら粘る姿に“七光”はなかったと言っていい。といって出自を無視することもない。序盤に見せた裏投げは母の得意技を伝授されたもの。相手の両腕を掴んで放つヒザ蹴り「カミゴェ」は、地方遠征中の飯伏幸太に教わった。“大向美智子の娘”だから身につけることができた技だ。サソリ固めは母が憧れた長与千種のイメージ。

「ずっとやってきたので絶対に出したかった」という空手の蹴りもシャープだった。まだ16歳、線の細さは否めないが、打撃をうまく使えば若手戦線での活躍は十分に可能だろう。マリーゴールドは若手選手が多い団体でもある。ライバル候補がたくさんいるのは本人にとってもプラスだし、周りの選手にとっては心希が刺激になる。

 とりわけ田中きずなとは縁が深い。田中の母は、やはり元レスラーの府川唯未。大向とはタッグを組んでいた。娘同士は幼馴染。ともにプロレスラーとなって、闘うにせよ組むにせよ話題を呼ぶことになるだろう。

【次ページ】 見届けた母の思い「さらけ出してましたね。だから100点」

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