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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥の勝利後本音「今夜は良くなかった」“怪物と最も拳を交えた男”はどう見たか? 黒田雅之が語る「年間4試合の疲労」「中谷選手の評価はまだわからない」
posted2025/12/31 06:51
12月27日、アラン・ピカソに12回判定勝利を収めた井上尚弥
text by

森合正範Masanori Moriai
photograph by
Naoki Fukuda
インタビュー後編では、井上の「今夜は良くなかった」発言の分析、敗者ピカソが描いていた戦略などを解説してもらった。《NumberWebインタビュー全2回/前編から続く》
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井上尚弥の「良くなかった」発言は…
井上は世界戦で史上最多となる27連勝をマーク。ただ、2試合連続の判定勝ちはキャリア初のことだった。試合後、「自分のやりたいボクシングと気持ちが一致しなかった」と振り返った。
――井上選手の「良くなかった」という発言を受けて、試合中にそう思うシーンはありましたか?
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「例えば最終ラウンド。危ないタイミングで左フックをもらっていました。バトラー戦じゃないですけど、相手が出てこないし、なんか物足りなそうな感じで。それがちょっと雑な動きにつながったのか、集中力を欠いていたのか。普段ならもらわないなと感じました」
――そのほかで気になった点は。
「『倒して勝つ』と言っていましたが、試合ではパンチをまとめて打ったら、下がって、ちょっと回ってワンクッション置いて、またまとめて打つ、という展開が多かった気がします。カルデナス戦はワンクッションを入れない結果、パンチをもらって倒れたので、本当に難しいんですけど、ピカソ選手みたいなディフェンシブな相手に対して、これまでより慎重だなと思いました。僕がこんな偉そうに言うのもあれですけど、『倒したい』という言葉とは相反するというか、淡々としているように見えました」
“年間4試合”の影響はあったのか?
最終12ラウンド、ピカソは左フックを大きく振り回した。ラウンド中盤以降、ピカソの左フックや細かいパンチが何度か井上の顔面にヒット。ダメージはないものの、ひやりとする場面もあった。
――これまでの井上選手は集中力を欠くとか、淡々という印象はありませんでした。以前のスパーリングで、そういうシーンはありましたか。
「どうでしょう……。まあ、疲れているときはありました。やはり、そういうのを考えると年4試合の疲労はあったんだろうなと。本人も『疲れた』と言っていましたよね。普段そういうことを言わないじゃないですか」
――言わないですね。
「彼が『疲れた』というのは、僕らレベルのボクサーでは計り知れないプレッシャーがあっただろうし。日本どころか、世界で最も求められているものが高い選手だと思います。今回も当然それに応えようとしていたと思うんですよ」
――年間4試合の影響は大きいですか?
「1カ月半ほど減量の準備をするとしたら、年の半分以上を費やしている。しかも今年の相手はサウスポー、オーソドックス、サウスポー、オーソドックスと交互ですよね。本人は気にしないかもしれませんが、やっぱり右と左を相手にしたときのズレってあると思います。試合前の練習段階から違う距離感やスタンスの選手と交互にやると、どこかでちょっとしたズレ、数ミリ単位のズレがあると思うんですよ」


