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「まるでヒョードル…生命体として強い」RIZIN新王者シェイドゥラエフとは何者なのか? 62秒でクレベル粉砕「とんでもない奴が現れた」1年前の“予言”
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布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2025/05/12 17:01

RIZIN初出場から1年足らずでフェザー級王者となったラジャブアリ・シェイドゥラエフ。衝撃の62秒TKOでクレベル・コイケを粉砕した
リングに熱狂を呼び戻したシェイドゥラエフ
対戦相手からしてみれば、序盤さえ耐えきることができればパンチやキックのタイミングや距離がわかってくるので、反撃の糸口をつかみやすい。攻撃を続けている側の疲れもたまってくる。
クレベルもシェイドゥラエフの動きが落ちてくるチャンスを待つつもりだった。しかし、そのときが訪れる前に試合は終わってしまった。
「仕方ない。今日はシェイドゥラエフのいいパンチが入ってしまった」
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いいパンチをもらいダメージを受けると、ガードしたまま棒立ちになったり、真後ろに下がったりするケースがままある。この日のクレベルはまさにそうだった。すぐに反撃するというより、「これ以上もらったらヤバい」という焦りの方が大きくなってしまったように見えた。
おまけに効かされているので、体は思い通りに動かない。試合開始から数十秒のうちにクレベルは袋小路に追い込まれ、壮絶に散ってしまった。
「レフェリーのストップが早かった」という意見も耳にする。クレベル自身も、もっと闘えたという考えだ。試合後のインタビュールームで「ちょっと早く止めたかな」と唇を噛んだ。
「この試合はタイトルマッチでメインイベントだから、レフェリーも気をつけているけど、ちょっと早い。パンチが入ってダウンしているけど、自分はまだ相手の足を捕まえていた」
一方で、クレベルは潔く敗北を認めようとする気持ちも持ち合わせているようだった。
「これはファイターの気持ち。悪く言いたいのではなく、レフェリーはレフェリーの仕事があるので」
1ラウンドでのTKOはシェイドゥラエフにとっても想定外だったようで、試合後はこんなコメントを口にした。
「打撃をちょっとやってからレスリングに入ろうかと思った。でも1ラウンド初めの打撃でこういうフィニッシュになってしまいました」
セミファイナルでは朝倉未来vs.鈴木千裕の一戦が行なわれ、熱狂のうちに朝倉が3ラウンドTKO勝ちを飾った。その余韻に浸りながら、観客はメインイベントの試合開始を待っていた。
ただ、あまりにもセミファイナルの熱量が高かったため、メインイベントの直前にはリングの熱が急速に冷め始めていた。しかし、そのリングにシェイドゥラエフはわずか1分で熱狂と興奮を呼び戻してしまった。