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渡辺勇大が“驚きの告白”「(競技を)辞める選択肢もあった」五輪メダリストがナゼ?「赤字垂れ流しで、切り崩しながら…」“代表辞退”後の現在 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byShiro Miyake

posted2025/05/13 11:02

渡辺勇大が“驚きの告白”「(競技を)辞める選択肢もあった」五輪メダリストがナゼ?「赤字垂れ流しで、切り崩しながら…」“代表辞退”後の現在<Number Web> photograph by Shiro Miyake

五輪2大会連続でメダルを獲得したバドミントンの渡辺勇大が、競技を取り巻く現在の環境や思いを明かした

「自費になったとしても、ほとんどの選手は企業が負担するため、選手が個人的に負担しているわけではないので、お金の出どころが変わっただけで、選手自身はあまり感じづらいんですけど。僕自身は社員ではなくてプロ契約を結ばせてもらっていたので、自分で渡航費を負担しなければいけない。直に影響を受けることで、感じ方はほかの選手とちょっと違ったのかな。ほんとうに自費で出るとなったら、出場する大会を減らさなきゃいけなかったり、生活を切り詰めたりしなければならないですから」

「もう赤字垂れ流しで、切り崩しながら…」

 パリ五輪後、田口と海外の大会にも出場したが、その負担は大きかった。

「もう赤字垂れ流しで、自分自身が持っているものを切り崩しながら……というところですね。スポンサーさんとの契約も、状況が変化したから切り替えてくださいというのは難しいので、新しい契約を結ぶまでは予算は増えませんから」

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 そして2025年になって日本代表の枠組みも明確に変わった。新たに発表された計41名の日本代表選手中、計12名が主要国際大会に派遣される「協会派遣」となり、彼ら以外の日本代表選手は、遠征費用は自費とされた。

 渡辺は、協会派遣の対象にはならないことを伝えられた。そこで代表を辞退する決断を下した。

「新しいペアで選んでいただきましたけど、世界ランキングが上がっていないので自分自身で渡航費を負担しなければならない。そうなってみると、代表にいることによって活動が制限されるのは少なからずデメリットとしてあったので、それだったら今回は辞退させていただいて、活動費を自分自身で賄うために活動させてくださいと話をしました」

驚きの告白「(競技自体を)辞める選択肢もありました」

 一連の話を聞くと、競技活動を続けていけるのか、不安に襲われても不思議はない局面が何度もあったのではないかと想像される。

「もちろん不安がなくはないんですけど、なんとかなる精神を持っているので、今も競技を続けられています。『選手を辞めちゃった方がマイナスは少ないじゃん』って思うことも実はありました。それに、選手を続けている理由って、勝ちたいのももちろんですけど、それでご飯が食べられたり生活ができたり、子どもたちに夢を与えられる職業になっていないとやっている意味がないかなって思ったりもしたので、辞めるという選択肢も僕の中でありました」

【次ページ】 「田口が組んでくれるのも大きかった」

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