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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥「弱い相手とばかり戦っている」は本当か? “ヘビー級の本場”イギリスの敏腕記者が語る“現地リアル評”「相手が弱く見えるのは…」
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2025/05/08 17:02
ダウンも喫した井上尚弥だったが、終わってみればラモン・カルデナスを一蹴。そのマッチメークを「ヘビー級の本場」英国人記者はどう見たのか
井上のマッチメークへの「議論」
視点をリングに戻せば、井上尚弥という存在には、また別の論点が存在する。
ここ数年、井上が披露してきたパフォーマンスには賛辞が集まる一方で、マッチメークについては海外メディアでもたびたび議論の的となってきた。「また相手が弱かったのではないか」という声は、カルデナス戦に限らず、過去のいくつかの試合でも繰り返されてきた意見だ。
だが、それは事実に反するとファレル氏は反論する。
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「井上がこの立場にたどり着いた道のりを見れば、そのマッチメークが軽いとは言い切れません。彼はスーパーバンタム級転向からたった1年足らずでスティーブン・フルトンやマーロン・タパレスといった優秀なボクサーたちを完膚なきまでに打ち破って、4団体のベルトをすべて統一しています。それも、スーパーバンタム級という多くの人が『井上には大きすぎる』と思っていた階級での話です。
さらに、ルイス・ネリ戦ではキャリア初のダウンを喫しながらも、そこから逆転KO勝利を収めるというスリリングな展開を見せました。つまり、『相手が弱く見える』のは、井上がこれまでに“強い相手を片っ端から粉砕してきた”からなのです」
そして今回のカルデナス戦でも、井上が試合を支配していく──そう思われた矢先に、予想外の展開が訪れた。2ラウンド、井上は左フックを浴び、キャリア2度目となるダウンを喫したのだ。しかし、ここで重要なのは、その後の“立て直し”だった。

