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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥はなぜ“危険な殴り合い”に身を投じた? 現地ラスベガスのリアルな声「イノウエがボクシングの週末を救った」激闘カルデナス戦“本当の意義”
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2025/05/06 17:02
猛烈な連打で挑戦者ラモン・カルデナスを追い詰める井上尚弥。ラスベガスでのビッグマッチは手に汗握る激闘となった
現地の声「イノウエがボクシングの週末を救った」
中盤に入ってもヒリヒリするような局面が何度も訪れる。それでもやはり井上は井上だ。フットワークを使いながら機を見てパンチをまとめ、6回にはラッシュを仕掛けて会場を沸かせる。伏兵の闘志も衰えず、7回には左で井上にダメージを与えた。しかしこのあと、井上が右を決めてついにカルデナスからダウンを奪う。8回、チャンピオンがまとめたところでレフェリーが熱戦に終止符を打った。
井上にとってラスベガスで戦う意味とは何だったのだろうか。これまでリング誌のパウンド・フォー・パウンド・ランキング1位、2階級での4団体統一など歴史に残る偉業を達成してきた井上がまだ経験していなかった試合があった。それこそが、自らが主役を務めるラスベガスのビッグイベントだった。歴史上のスター選手が主戦場としてきたラスベガス。井上の輝かしいキャリアに欠くことのできない戦いだったのだろう。
今回の試合で井上はダウンを喫した。決して完璧な内容ではなかった。ただし「盛り上げる。ファンのハートをつかむ」という意味では100点満点の試合だったと言える。この週末はビッグイベントが他にもあった。ライアン・ガルシアら中量級のスター選手がニューヨークで競演し、第一人者のカネロ・アルバレスがサウジアラビアのリングに上がった。ただ、いずれも試合内容は今ひとつで、ラスベガスの現地記者からは「イノウエがボクシングの週末を救った」という声が聞こえてきた。井上はその重責を十分にまっとうしたのである。
井上尚弥はラスベガスに何を残したか
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すでに明らかになっているように、井上はこの日、9月のWBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦をあらためてファンに明言した。12月にサウジアラビアでWBAフェザー級王者ニック・ボール(英)と戦い、中谷潤人(M.T)とのドリームマッチは来年5月と言い切った。
井上が勝利者インタビューで最初に口にしたセリフが興味深い。
「今日の試合を見ていただければ、僕が殴り合いが好きだと証明できたと思います。すごく楽しかったです」
カジノを筆頭とするエンターテインメントの街、ラスベガスはボクシングも派手な内容が求められる土地柄だ。モンスターが眠らない街にふさわしいパフォーマンスを全米のファンに届けた。世界のライバルたちはこの試合をどんな思いで見つめただろうか。
<前編とあわせてお読みください>


